ドット絵

【裏バイト:逃亡禁止】夏のホラー企画第2弾!裏サンデーでWeb連載中のホラー漫画から「福ノ神」のドット絵

2023年のホラー企画、第2弾。

今回は『裏サンデー』でWeb連載中のホラー漫画『裏バイト:逃亡禁止』を題材にしました。

2021年には『次にくるマンガ大賞』で入賞を果たすほど話題になった漫画です。

オムニバス形式で読みやすく内容も(理不尽なくらいに)怖いので、ホラー成分をすばやく摂取するのにぴったり。

仕事の意図を考察する楽しみ方もできます。

ドット絵を見て興味を持った方は、ぜひ漫画を読んでみてください。

この記事は漫画のネタバレを含みます。

オチまでは載せていませんので、その点はご安心ください。

ホラー漫画『裏バイト:逃亡禁止』のエピソード『助勤巫女』

『福ノ神』

タイトル:『福ノ神』

制作時間:47.7時間

『裏バイト:逃亡禁止』は主人公の女性2人組が大金を稼ぐために裏バイトを繰り返していくホラー漫画です。

各エピソードは合計3話程度、オムニバス形式となっており、途中から読み始めても物語から置いて行かれることはありません。

裏バイトと聞くと犯罪の片棒を担ぐような仕事を想像するでしょう。

この漫画における裏バイトはほぼ全てがオカルト案件

超常の何かが絡んできます。

依頼者にそもそも後ろ暗い思惑があったり謎の怪異が潜んでいたり、危険の原因は多種多様。

共通するのは裏バイターおよび関係者の生還率が著しく低いことです。

登場人物がバタバタ死んでいきます。

犠牲者のドット絵

渦中にいる主人公たちでさえ事態を正確に把握できていないことも。

反面、作中で説明されない謎部分に考察の余地があり「この漫画の味」になっています。

『助勤巫女』はコミックス2巻に収録されているエピソード。

主人公らを含む4名の女性が福音島という孤島にある神社で巫女のアルバイトを務めます。

島民は全員お金持ち。

神社の中央にある井戸には「福ノ神」が住んでおり、そのご利益によって身を立てているとか。

裏バイターの1人が行方不明になったことをきっかけに、島の秘密が明らかになっていきます。

未帆(みほ)

未帆のドット絵

エピソード『助勤巫女』に登場する裏バイターで主要人物のひとり。(主人公ではありません)

父の借金を返済するため裏バイトに応募。

会って間もない主人公たちから良い子と評価されるくらい素直な性格をしています。

親友である真琴の「危なっかしいところがある」という不安が的中し行方不明に。

結末はドット絵の通りです。

真琴(まこと)

真琴のドット絵

エピソード『助勤巫女』に登場する裏バイターで主要人物のひとり。(主人公ではありません)

親友の未帆に付き合う形で裏バイトに応募。

未帆が姿を消した後は島民の制止も聞かずに彼女を探し続けました。

最後は発見に至りますが……。

福ノ神

福ノ神のドット絵

巨大な頭部を持った得体のしれない何か。

元々は井戸水を盗み飲みに来るだけの存在でした。

人の運気を操る能力を持ち、清純な女性をいけにえに与えられた場合は最大の力を発揮するようです。

過去には力を利用したい人間たちによる争いが増加。

禍根である福ノ神が近づかないよう人々は神社を立てて井戸を守ったものの、年に一度の正月だけは歳神様に扮して戻ってくるようです。

そしていつの頃からか「福ノ神」と呼ばれるようになりました。

ドット絵の説明

『福ノ神』静止画

この作品は『裏バイト:逃亡禁止』のエピソード『助勤巫女』を再現したドット絵です。

2つのシーンを交互に差し込んだ構成にしました。

1つは福ノ神が井戸にやってきたシーン。

シーン1のドット絵(アニメーション)

もう1つは真琴が井戸の中で未帆の死体を見つけるシーンです。

シーン2のドット絵(アニメーション)

時系列が入り乱れているので初見の方には分かりづらい作品になっているかもしれません。

ぜひ漫画を読みましょう。

井戸の中

井戸の中のドット絵(アニメーション)

巫女がいる場所は井戸の底。

漫画だと壁面が平らに見えました。

ドット絵では石積みの壁に改変しています。

理由については後半の制作記事で。

福ノ神のビジュアル

福ノ神のドット絵

福ノ神は歳神様の格好をしているということで、現実世界の歳神様を作画の参考にしました。

検索して出てきた画像の歳神様があぐらをかいていたので福ノ神も同じように。

漫画だと井戸の底で(おそらく)座っているところを確認できているものの、コマには頭しか収まっておらず。

よって座り方は完全に想像の産物になっています。

ひょっとするとかがんでいただけの可能性も……。

真琴のけが

真琴のドット絵(アニメーション)

真琴は井戸への落下で骨折しているので、左腕をぷらんぷらんさせています。

他にもけがをしていそうでしたが目視できた負傷の描写に絞りました。

もう一点、迷ったのは血のりです。

未帆と同様に血まみれにすべきか迷いました。

死者と生者の違いを示唆するのにちょうどいい記号になると思い、まだ生きている真琴には血のりを追加しない方針に。

[制作記事]ドット絵内の状況を伝えやすくするための改変

私は二次創作するにあたって原作再現を心掛けている一方で、デザインに変更を加えることがあります。

判断材料のひとつが「初見の人に状況が伝わるか」どうかです。

漫画が原作のドット絵は、基本的に漫画のワンシーンを切り出すことになります。

原作を読んでいる人ならどの場面か分かりますが、未読の方だとどうでしょう。

例えば下の画像を見て、2人が井戸の底にいると伝わるでしょうか。

井戸の底のドット絵

暗い部屋の隅という解釈もできますよね。

縦長サイズにして高さがあることを強調しているものの、ほとんどの人にとって厳しいレベルだと思います。

ドット絵では「そこに至る経緯」を漫画のように描き切れないことがほとんどです。

正確な情報が伝わるように努力する必要があるでしょう。

今回のドット絵『福ノ神』では巫女の居場所が閲覧者に正しく伝わるよう、大きく2つの改変を加えました。

その概要を説明していきたいと思います。

改変箇所

ドット絵『福ノ神』では以下の2点において原作から変更を加えています。

  • 時系列
  • 井戸の内壁

時系列

ドット絵『福ノ神』では漫画内で描かれた2つのシーン

  • 福ノ神が井戸にやってくる(シーン1)
  • 真琴が未帆を井戸の底で発見する(シーン2)

を交互に挿入しています。

2つのシーンを並べた画像

漫画の時系列だとシーン1がシーン2より先。

  1. 福ノ神が井戸にやってくる。(シーン1)
  2. いけにえ(未帆の死体)が井戸に投下される。
  3. 数日経過
  4. 真琴が井戸の中で未帆を見つける。(シーン2)

という流れになっています。

つまり原作では異なるタイミングのシーンが、ドット絵だと入り乱れて再生されているのです。

井戸の内壁

漫画で確認できる井戸内の壁はコンクリートでならされたように平らになっていました。

おそらくは島民によって「整備されている」のでしょう。

ドット絵ではそんな壁を石積みに変更しています。

石積みの井戸のドット絵

原作に描かれている部分の変更なので時系列のケースとは異なり、完全な改変といえるでしょう。

改変の目的

改変を加えた理由はいずれも、巫女2人が井戸の底にいると閲覧者に伝わりやすくするためです。

漫画未読の方を特に意識した改変になっています。

冒頭で井戸の存在を印象付ける

居場所が井戸の底だと認識するためには、まずこのドット絵に井戸という要素が絡むことを閲覧者に知ってもらう必要があると考えました。

井戸の内部だけで察してもらうのは難しいので井戸そのものを見せておくべきでしょう。

そこで思いついたのが時系列の操作でした。

福ノ神がやって来るシーンを挿入すれば、井戸の外観描写をアニメーション冒頭に持ってくることができます。

シーンを順番に並べた画像

さらにシーンを分けて挿入することによって井戸の外観をお披露目するだけにとどまらず、インパクトがあるアップシーンをクライマックスに設定できるメリットも生まれました。

福ノ神の顔のアップ画像

ステレオタイプに近づける

皆さんは井戸と聞いてどんなビジュアルをイメージしますか?

多くの人は石造り、その中でもレンガ造りを想像するのではないかと思います。

漫画未読の方が状況を把握するためには、このようなステレオタイプを取り入れるのが効果的だと考えました。

『裏バイト:逃亡禁止』の舞台は日本ですので、レンガ造りに相当するのは石積みになるでしょう。

原作漫画では平面だった内壁を、多くの人がイメージするであろう石造りに変更することで、井戸内部のドット絵でも場所を認識しやすいようにしました。

変更前後を並べた画像

ビジュアルを変えるというのは自分にとって勇気がいる改変です。

  • ビジュアルの正確さよりも「井戸であること」が重要。
  • 福ノ神の井戸は歴史的に古いものなので石積みにしても違和感がない。

という考えのもと実行しました。

改変は大勢に影響がない範囲で、というのが私の信条。

その条件は守れているだろうと思っています。

ホラーというジャンルは好みが分かれるので、どんな名作であっても未履修という人は多いです。

ホラードット絵はそんな人に向けて布教の意味で制作していることもあり、初見への配慮を強めに考えています。

いつもは知らない人は置いていくくらいの気持ちなんですけどね(笑)

それでは今回はここまで。

次の記事でお会いしましょう。

『福ノ神』等倍

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