皆さんはトレーディングカードゲームをプレイしたことがありますか。
私は、中断期間を数回挟みながらも『マジック:ザ・ギャザリング』(以降、MTGと省略)ひとすじで遊んできました。
今はデジタルゲーム化して家にいながら気軽に遊べるようになりましたね。
今回はそんな世界的に大人気のトレーディングカードゲームMTGのドット絵です。
カードイラストをドット絵で模写したものです。
また、ドット絵における模写について記事の後半で私見を述べてみます。
MTGカードイラストドット絵
タイトル:『PIXEL MTG』
制作期間:2015年~2017年
パックから出たレアカードを描いています。
MTGに詳しい人ならパックを買った時期がわかってしまいそうですね。
引きが強めと感じますか?
……本作はうまく描けたドット絵をまとめたものでして。
一般的に「外れ」と言われるカードを大量に引いています。
パック開封はロマンですからね……。
クオリティが低くボツにしたドット絵たちです。
このカードイラストドット絵化チャレンジをやっていた当時は、引いたカードをドット絵で描かない限り次のパックを開封できない縛りを自分に課していました。
しかし開封欲を抑えきれず、ドット絵を雑に完成させてさっさと次のパックを開封していたのが実情です。
このボツよりひどい出来のドット絵もたくさんあります。
pixivに投稿すると決めて気を引き締めなければクオリティは上がらなかったでしょう。
コンセプト
「ドット絵表現に置き換えつつの模写」がコンセプトです。
イラストをドット絵に変換するツールってありますよね。
出力されるドット絵には余計なノイズが入っていて、良くも悪くも元絵の縮小版、ドット絵には遠いといった印象です。
ドットの整理、メリハリのある配色といったドット絵の定番技法を使い手作業でドット絵化をしてみようと考えました。
『PIXEL MTG』は練習の意味合いが強い作品です。
パックから出たカードを描くというのも描く対象物が偏らないための配慮です。
海外のドット絵をよく見ていた時期で、発見した手法を積極的に使っていました。
ドット絵化したカード一覧
『PIXEL MTG』で描いたカード名を紹介します。
実物のカードを持っている方は是非比べてみてください。
[ ]内にセット名を記載しています。
1段目
1段目は白のカードです。左から
- 神聖なる月光 [マジック・オリジン]
- 悟りの教示者 [エターナルマスターズ]
- 秀でた隊長 [基本セット2015]
- 魂火の大導師 [運命再編]
- エメリアの番人 [戦乱のゼンディカー]
2段目
2段目は青のカードです。左から
- ミジウムの干渉者 [マジック・オリジン]
- 時を越えた探索 [タルキール覇王譚]
- ウギンの洞察力 [戦乱のゼンディカー]
- 終止符のスフィンクス [ゲートウォッチの誓い]
3段目
3段目は黒のカードです。左から
- 英雄の破滅 [テーロス]
- 死滅都市の悪鬼 [タルキール覇王譚]
- 禍々しい協定 [タルキール龍紀伝]
- 精神病棟の訪問者 [イニストラードを覆う影]
4段目
4段目は赤のカードです。左から
- ゴブリンのドカーン物取扱者 [基本セット2015]
- 包囲ドラゴン [基本セット2015]
- 炎影の妖術 [マジック・オリジン]
- ヘルカイトの突撃者 [モダンマスターズ2015]
- ゴブリンの闇住まい [ゲートウォッチの誓い]
『ゴブリンの闇住まい』はとても好きなカードでした。
5段目
5段目は緑のカードです。左から
- 極楽鳥 [基本セット2012]
- 貴族の教主 [モダンマスターズ2015]
- 霧裂きのハイドラ [テーロス]
- 神秘の痕跡 [タルキール覇王譚]
- 仇滅の執政 [タルキール龍紀伝]
『貴族の教主』は驚異的なシングル価格を誇ったカードです。(今でも充分高い)
6段目
6段目は単色以外のカードです。
左から
- 荒廃を招くもの [戦乱のゼンディカー]
- もう一人の自分 [イニストラードを覆う影]
- 幽霊火の刃 [タルキール覇王譚]
- 血染めのぬかるみ [タルキール覇王譚]
- 汚染された三角州 [タルキール覇王譚]
pixivに投稿したのはクオリティを充分に確保できたと判断したドット絵です。
改めて見るといいカードが多めです。
当たりを引くと気合が入るのかもしれません。
また、怪物が描かれているカードも多いです。
MTGのクリーチャーデザインは秀逸ですから描きたくもなります。
やる気って大切ですね。
ドット絵の練習で模写は有効か
イラストの練習で模写は一般的ですよね。
ドット絵の場合はどうでしょう。私見ですが
- ドット絵を模写するのはほぼ無意味
- ドット絵以外をドット絵で模写するのは有効
と考えています。
ドット絵の練習は参考にするドット絵を見ながら別のドット絵を描くのが手っ取り早いです。
ドット絵以外(写真やイラスト)を模写すると、低い解像度上にどうやって表現するかという問題にぶつかります。
それらしく見えるドットの置き方を模索したり、同じような対象が描かれたドット絵を観察し手法を取り入れるといった「考えて描く」行為につなげやすいです。
ドット絵を模写するのはなぜ無意味か
ドット絵は低解像度ゆえ模写元と寸分違わぬ位置にドットを置けてしまいます。
模写といいつつ、機械的にドットをコピーしていく単純作業に成り下がってしまう可能性があるのです。
上手いドット絵から表現方法を読み取るのは確かに意味があるでしょう。
しかし、元絵と同じ位置にドットを置く行為に意味があるでしょうか。
同じドットの置き方をすれば再現できるのがドット絵なのですから、例えばあるドット絵キャラクターの目が気に入ったのなら、自分で描いたキャラクターに同じ目を描いてみればいいのです。
そうすれば「頭の大きさや角度が違うから不自然に見える」などと気づくでしょう。
ドット絵をそのまま模写するとこうした気付きもありません。
ドット絵”で”模写するポイント
ここからは、ドット絵”で”写真やイラストを模写する練習方法について触れていきます。
ドット絵とはいえ模写ですから「木を上手く描けるようになりたい」など目的をもって臨みましょう。
私的なポイントは
- 参考にするドット絵で使われている手法を真似る。
- 模写元の完全再現にこだわらない。
の2点です。
イラスト模写の実例
『PIXEL MTG』を使用してイラストのドット絵模写例を説明します。
参考ドット絵から手法を取り入れる
3枚のドット絵の背景には同じ手法を使用しています。
わかりにくいので大体の場所を枠で囲ってみます。
何色かのモヤモヤが入り組んだような描き方ですね。
雲など不定形の物質を描く際に海外のドッターさんがたびたび使っている表現方法をまねしたものです。
同じ表現方法にも関わらずモヤモヤの粗さや広がり方、混ざり具合で別の物質に見えないでしょうか。
それぞれ「立ち上る煙」「差し込む光に照らされるホコリ」「曇天」を表現しています。
これは
- 「海外ドッターが不定形の物質を描く手法」を取り入れると決める。
- 模写元イラストの「煙」「ホコリ」「雲」に手法を適用すると決める。
- 手法にわずかな変化を加え一番それらしく見える表現を探る。
ということをやっているわけです。
対象が不定形ですから適当にドットを置いてもそれなりに見えるだろう……と思いきや、実際はなかなか上手くいきません。
モヤモヤの入れ込み方で段グラのように汚く見えた、煙のつもりがなんか固そうなモコモコになった、など失敗を繰り返し試行錯誤していきます。
ドット絵が完成に至ったのなら、この手法は煙やホコリ、雲に近い他の物質にも適用できると予想できるでしょう。
今後似た題材を扱う際にこの手法を選択できます。
模写元を完全に再現しようとしない
模写をしているとどうしても再現度にこだわりたくなります。
気持ちはわかりますが、ドット絵では再現度がさほど重要でないと考えています。
そもそもドット絵の低解像度では元絵を完全再現できません。
デフォルメなどドット絵としての表現力向上を狙うべきです。
このドットを見てどんな情報を読み取りますか?
「火口」「熱そう」「視界が悪い」などでしょう。
模写元のイラストを見たときもおそらくは同じ答えが返ってくると思います。
元絵の雰囲気を損ねていない。これが重要です。
例えば、背景の煙は色の階調をはっきりと見て取れますが、元絵は当然もっとなめらかに色が変化しています。
岩の形、マグマの固まり感も違っています。
ドット絵ではメリハリのある色合いやドットの収まりを優先しているため、こういう表現にしているのです。
それでも煙は煙、岩は岩、マグマはマグマとわかるはずです。
こういった細部の違いで元絵とドット絵を全く別モノと判断する人はいないでしょう。
MTGをやっている人ならこのドット絵でカードを特定できると思います。
元絵に描かれたオブジェクトや雰囲気を判別できるまで描ききった後は、ドット絵としての見栄えを向上させる練習にシフトするバランス感覚が大切です。
まとめ
ドット絵も絵ですから考えて描くことで上達します。
ドットを機械的にコピーするだけの作業になりかねないのでドット絵を模写することはおすすめできません。
表現方法を発見し習得する目的ならば、自分なりに考える要素が多い「ドット絵”で”模写」の方が断然おすすめです。
ただ、わざわざ模写を選択する必要性は少ないと感じています。
自分の作品を描く場合にも他のドット絵を参考にしたり、あれこれ考えて描くわけですから。
アイディアはないがドット絵の上達のために手を動かしたい、オリジナル作品ばかりで描くものが偏っている、など状況を見て模写を選択しましょう。
pixivに投稿した分のドット絵を今回でようやく公開し終えました。
次回からは新規作成分のドット絵を投稿していきます。