美女のドット絵が連続した先週までと打って変わって、今週はクリーチャーのターンです。
美形キャラはちょっと崩れただけで見た目を大きく損ねますがクリーチャーにはそれがありません。
描く過程の楽しみ方が違ってきます。
奇麗どころと怪物を交互に描きたくなる理由はきっとそこですね。
そういうわけで『Lobotomy Corporation』というゲームのクリーチャー(通称アブノーマリティ)を描きました。
といってもゲームではおとなしいデザインに分類される方だとは思います。
ぜひ見ていってください。
『Lobotomy Corporation』から「空虚な夢」のドット絵
タイトル:『空虚な夢』
制作時間:22.5時間
Lobotomy Corporationでは職員の育成が欠かせません。
安定して管理できるアブノーマリティがいれば、安心して職員に実務経験を積ませられます。
「空虚な夢」は下から2番目のリスクレベルTETHに分類され危険度が低く、育成に利用しやすいアブノーマリティです。
愛着作業との相性が良いので職員の自制上げに役立ちます。
ただし、自制ランクが低い職員が作業すると二度と覚めない眠りについて実質死亡。
自制を上げたい職員の自制が低くてあの世行き、なんてミスがないようにしたいですね。
私はたまにやらかします。
本作では職員を眠らせている空虚な夢を描きました。
空虚な夢は対象が望む夢を見せてくれるといいます。
夢の内容から察する通り、犠牲となった職員は欲望に忠実な自制心のない人間です。
もう目覚めることはないでしょう。
ビジュアルガイド
空虚な夢
ゲームのビジュアルに従ってアブノーマリティ本体を描きました。
「空虚な夢」の外見は以下のように説明されています。
- 白くふわふわな体毛
- 薄紫色の頭部に白いらせん状の角
- ピンク色の小さな鼻
- 白く細長いしっぽ
- 小さな脚
ここまでなら羊とほぼ同じ外見といっていいでしょう。
特筆すべき他の特徴は
- 緑色と紫色の瞳を持つ2つの眼球が胴体に埋まっている
- 常に目を閉じている
ことの2点です。
不穏な雰囲気が漂ってまいりました。
ゲームのコンセプトを知っているプレイヤーなら目を開けたときはろくでもないときだと想像できてしまいます。
この特筆事項の1つ、胴体に埋まっている眼球の位置をドット絵では変更しています。
本来は胴体の中央付近にあるのですが、職員を配置するスペースを確保するために両脇にずらしました。
こだわりポイント
アブノーマリティの胴体を吹き出しのように使って、むなしい夢から抜け出せない職員を描きました。
アブノーマリティの外見的特徴を損ねないように、眼球やしっぽは職員の前面に浮き上がらせています。
夢と現実のギャップを顕著にするため夢の内外で明るさを変えました。
暗い現実世界が暗示するものは職員の死です。
それにしてもアブノーマリティには暗色の背景が似合いますね。
アルリウネを描いたときからそう思っています。
『空虚な夢』の構造
本作のアニメーションは少々煩雑になりました。
全体が18枚でループしつつ、各所で異なるループ枚数のアニメが動いています。
部位ごとのループ枚数は以下の通り。
空虚な夢 | 6枚 |
はしゃぐ職員 | 9枚 |
眠る職員 | 6枚 |
眼球 | 18枚 |
背景 | 18枚 |
Zマーク | 3枚 |
文字 | 6枚 |
私が使用しているドット絵エディタ『EDGE2』には「キャプチャアニメーション」という強力な機能があります。
アニメーション機能に乏しいツールだと各アニメを結合してコマを作成しなければいけませんが、EDGE2ならば上の画像のようなイメージを持ちながらアニメを組み立てることができます。
数が多いと頭がこんがらがってきますが……。
GraphicsGaleやAsepriteのようにアニメーションに強いとされるツールはたくさんあるので、機能に合ったアプローチでドットアニメーションを制作していきたいですね。
太陽や月が昇るアニメーションの制作
空虚な夢内部の背景にも動きがあるのにお気づきでしょうか?
太陽と月が交互に昇っています。
本アニメーションを作成するにあたって位置決め用の骨組みを先に作りました。
考えなしでアニメに着手するとかえって時間がかかるので、最近ではこうしてアタリやラフをまず動かすようにしています。
赤マスが太陽と月の配置場所です。
円を六等分する位置取りで、赤マスが移動するコマを作成していきました。
補助線を使いつつ赤マスの位置を取ります。
円を六等分する方法は「ケーキ 六等分」などで検索すると見つかります。
垂直・水平方向を基準にするならこのように奇麗な補助線を引けるのですが、中間のコマだとそうはいきません。
ツールの回転機能で補助線を回転させました。
あくまで「補助」線ですから、1ドット単位で正確な位置を割り出す必要がないと判断しました。
補助線のドットは崩れていますが赤マスを配置する上で問題なさそうでしょう?
こうして作成した4コマを合わせると骨組みアニメーションのベースが完成します。
必要なのは太陽と月の2つ分の赤マスですから、余分な赤マスを削除しました。
さて、このアニメーションのループ枚数は24枚(太陽と月で各12枚)。
『空虚な夢』のループ枚数は18枚を予定しているので、6枚削りたいところです。
そうしないと作品全体のループ枚数が18と24の最小公倍数である72枚になってしまい、かなり無駄があります。
この背景アニメは金の山に隠れない上側の半分だけ露出するので、見栄えに影響が出ないコマを選択して削除します。
12コマから不要な3コマをチェックしたものが上の画像です。
このように、太陽側12枚と月側12枚からそれぞれ3枚を削除しました。
これで合計18枚ループになります。
赤マスを太陽と月の画像に差し替えれば背景アニメーションが完成します。
削除したコマの影響で移動が一瞬速くなる個所がありますね。
上層レイヤで重ねられる画像に隠れるのでほぼ気付きません。
金の山で見えなくなっているのが分かります。
ポイントをまとめると
- 大まかなアニメパターンを先に完成させる
- 見た目への影響が少ないコマを省き計画通りのループ枚数に収める
の2つです。
アニメの描き込み前にできることは結構多いですね。
「空虚な夢」は(一線を越えなければ)かわいい外見をしています。
それでも簡単に人を死なせる程度に危険なアブノーマリティであり、羊の皮を被った怪物のおぞましさをどう演出するか考えるのがとても楽しかったです。
最後に等倍のドット絵でお別れしましょう。
それでは!