最近はどうにもドット絵の上達を感じられなくなってきました。
別のアプローチが必要です。
そこで過去に制作したドット絵のリメイクをしてみることにしました。
今より劣るドット絵を手直しして自信につなげようという試み。
セルフマウントのようなものです。
どうせやるのなら文章化しようということで今回の記事にまとめます。
少しでも後進の役に立つものになれば幸い。
ぜひ見ていってください。
「現在の自分から見てイマイチなドット絵」であって、万人にとって「下手なドット絵」でないかもしれません。
しかし「リメイク後の方が下手じゃね?」なんて思わないように!
約束ですよ!
修正前ドット絵の分析
リメイクするドット絵の紹介から始めましょう。
上画像は2008年の作品であり、私がドット絵を開始して2年くらい経過した頃のもの。
モチーフはアスキーアート(AA)。
ファンタジー世界風のデザインに改変しています。
同シリーズのドット絵については過去記事で触れていますので、興味がありましたらぜひ。
古い作品と言うこともあり技術不足が目立つ印象でした。
そこで新たに描きおろすのではなく、ドット絵としてのバージョンアップを目指して作業を進めていきます。
線まで修正してしまっては描きおろしと変わらないので
- 線画は微修正にとどめる
- 塗りをメインに修正する
方針とします。
塗り直し感覚なので「リペイント」としましょう。
リペイント前のドット絵からイマイチなポイントを洗い出し、修正目標を設定していきます。
もちろん「作品に合った描き方」というものがあるので絶対的に駄目だとはいえません。
今の私だったらこうする、という視点で話を進めさせていただきます。
少なくとも当時よりは上達しているつもりなので、挙げた項目が見栄えを向上させる要素になることは間違いないでしょう。
たぶん。
肥大した色数
当時の私のような駆け出しがやりがちなのは色数を増やしまくること。
現代においてハード性能を意識して色数を制限するのはナンセンスだと思っているものの、ドット絵らしい色使いを再現するためには一定の制限が必要だと確信しています。
色数が多すぎるとドット絵がぼやけて発色が失われ、イマイチな印象を抱きやすくなるからです。
修正前のドット絵のカラーパレットを確認してみましょう。
使用している色をパーツごとに横に並べています。
一番上の黄色7色は肩プロテクターやベルトに使用、上から3番目の赤7色はマントに使用、という具合。
これが多いのかという話ですが……多いです。
私の基準だとこのサイズならばメインカラーで5色が上限といったところ。
このドット絵はほぼすべてのパーツに5色以上を費やしていました。
一部4色に収めている赤色がありましたが、なんと口に使われています。
この小さな面積のために4色はさすがに無駄です。
全体的に色数がかさんでいる傾向を顧みて
各パーツ5色以内に収めること
を目標にしましょう。
色数を減らして貧相になってしまっては本末転倒なので、ドット絵のクオリティが下がって見えないようにすることも頭に入れておきます。
モアレの発生
ドット絵を見て「汚い」印象を受けませんでしたか?
原因はおそらく「モアレ」です。
モアレとは、配置したドットの角が揃うことで表面がザラザラした模様に見える状態を指します。
頭部や肩プロテクターが分かりやすいと思います。
ドット配置の良し悪しが分からない初心者のうちに発生しやすく、当時の私ももれなくやっていました。
現在では気を付けていることもあって、目に見えるレベルのモアレを発生させることはほぼありません。
よってリペイントでは
モアレを解消すること
を目標に加えます。
不明確な形状・質感
最後は画力面に少し触れます。
元ドット絵で作画的に怪しい個所はないでしょうか。
私は創作において「だまし」はあっていいと思う派ですが、明らかな破綻は無くすべきだと考えています。
そういった目線で見るとマントが不自然に感じました。
まず、下に隠れている左腕が分かるように陰影をつけています。
立体を意識する姿勢はすばらしいのですが、このような形状が浮かび上がるものでしょうか。
マントが腕に押し付けられているのでない限りこうはならないと思います。
次にマントの先端。
はためいた一瞬を切り取っているので形がゆがむのは分かります。
しかしこれでは先端が二股に分かれていると解釈されかねません。
静止時の形状を考えて作画していなかったのでしょう。
本来の姿を想像できるように作画し直したいところです。
質感の観点では肩プロテクターを見てみます。
金でできた防具を描こうとしたと推測できますが、金属光沢や重量感を再現できていません。
マントとは事情が違い、技術不足により表現しきれなかったといった方が適切でしょうか。
当時はそれっぽく描き、汚くない程度に塗るのが限界でした。
リペイントにおいては
パーツの形状や素材を認識しやすくすること
を目標にします。
ドット絵のリペイント
さっそくですが修正後のドット絵をご覧いただきましょう。
修正前後の画像を比較するとこうなります。
どちらの方がお好みでしょうか。
ここからは塗り直しまでの手順を説明していきます。
全体像の破綻チェック
最初にキャラクターのポーズがおかしくないか確認しました。
このキャラクターは左半身がマントで隠れた状態。
実は破綻しているのに衣服でごまかしているというのはよくある話です。
私はよくあります。
隠れたパーツをラフレベルで描きおろし、頭部と胴体、腕、脚のつながりに整合が取れそうなことを確認しました。
単純化
今回のリメイクはリペイントという名目ですので、既存の線を生かす方針にしました。
そこで主線をなぞり、パーツごと単色で塗りつぶします。
一度単純なドット絵に戻した方が線画を見直しやすく、先入観を取り除いて描き直せると思いこのフェーズを挟みました。
線画の修正
主線が明確になったところでドットが整理されているかをチェックします。
一定の規則性を持ってドットを配置するのがドット絵の定石。
定石を守っていない線はガタガタで汚く見えがちです。
当時の私もそれは心得ていたようで、大きな問題はない印象でした。
次に焦点になるのが適切に線を取れているか。
ダメ出しをしたマントを思い出します。
先端が二股にみえ、マント本来の形状を考えずに描いたと推測。
アン〇ンマンが装着しているような普通のマントだと判断できる線画に修正しました。
絵のだましはあっていいと考えているので、はためき方やしわの再現度は気にしていません。
マントのほか肩プロテクターの凹凸やブーツなど、細かいところも修正しました。
私はドットの並びがより良くなる配置を優先する方針です。
肩プロテクターの丸い突起が顕著ですね。
楕円から正円に変更しています。
描き込み
ここからは最終工程にして、メインとなる塗り直し作業です。
掲げた各目標の達成状況を確認していきましょう。
使用色の削減
最初にダメ出しした「色の増やし過ぎ」問題。
リペイント後は各パーツ5色以内に収めました。
画像は修正後のカラーパレット。
修正前55色から修正後36色に減っています。
35%の削減となりましたが、塗りが貧相になった印象はないのではないでしょうか。
修正前は「似た色」が多く存在する状態でした。
無くても何とかなる色が多かったといえます。
マントのカラーパレットは
の7色グラデーションになっていました。
RGBの刻み幅が小さいので、中間の色を削除しても十分に塗れる可能性があります。
近い色同士を統合しつつ、色差がつき過ぎないようにRGBを調整していきました。
黒など目視で差が分かりにくい色ほど、思い切って統合しても影響が少ないです。
モアレの修正
塗りで発生するモアレは多くの場合、ドット配置の問題でしょう。
- グラデーション塗りを避ける
- ドットの角が揃わないように配置する
を心掛ければ大抵は防止・軽減することができます。
現在の私の画風だとグラデーション塗りを避けるケースがほとんど。
グラデーション塗りをしなければドットの角が揃う心配がないため、角をずらすリカバリも必要なくなります。
修正後の肩プロテクターを見てみましょう。
少し複雑に見えるかもしれませんが基本はベタ塗り。
反射光を描き加えると完成形になります。
暗から明へグラデーションさせる考え方で塗っていないと分かっていただけるでしょうか。
金属光沢
独特の質感を出すには、他パーツと塗り方を変えるのがポイント。
「違う素材」だと閲覧者に認識してもらうためです。
ドット絵の肩プロテクターでは金属塗りを意識しました。
具体的には
- 隣り合う色の差を大きくする
- 白(に近い色)を採用する
です。
暗から明まで段階的に変化する1~5番の色があるとして、2番の色を置いたら隣に4番の色を置くイメージ。
段階的にではなく、急激に色が変わるようにするのです。
ジャギが気になるなら中間色(3番の色)でジャギ消しをすればいいでしょう。
画像で説明すると下のようになります。
明るい色(紫)のすぐ隣に暗い色(青)を配置し、中間色(水色)はジャギ消し程度。
金属は光を強く反射することから極端に明るい色をハイライトに採用すると、さらにらしくなります。
今回は明るい黄色の中にハイライトとして白を差しました。
最も明るい黄色部分を白色に置換すると、より磨き抜かれた金属感が出たりします。
冒頭で「成長を感じられなくなった」と言いましたが、2008年の自分と比較するとさすがに同レベルには思えませんでした。
リペイントとはいえ制作スピードも段違いです。
一応は成長を確認できたものの、最近の停滞感の正体はなんなんでしょう。
やっぱり刺激が必要でしょうか。
早く脱出したいです。
それでは今回はここまで。
次の記事でお会いしましょう。