ドット絵と聞いたとき、ファミリーコンピュータ(ファミコン)のような低解像度を想像する方は多いのではないでしょうか。
最近は「レトロゲーム風」なんて表現もよく目にします。
(ドット絵=レトロという風潮になっている気もしますが)
ハード制約がなくなった現在になってもファミコン風ドット絵は健在。
私はこれまで描いたことがありませんでしたが、今回は昔のゲームグラフィックをほうふつとさせる題材だったためファミコン風のドット絵に挑戦してみました。
仕様を勉強しながらの制作になり、いつもと違って楽しかったです。
ぜひ見ていってください。
パニックホラー漫画『魔法少女・オブ・ジ・エンド』から「スキンショット・M」のドット絵
タイトル:『スキンショット・M』
制作時間:12.3時間
『魔法少女・オブ・ジ・エンド』は、突如現れた魔法少女たちが人々に襲い掛かるパニックホラー漫画です。
主人公が魔法少女から逃れつつ真相に近づいていく、という内容。
漫画タイトルから分かる通り、敵役である魔法少女こそが作品の魅力だと思っています。
魔法少女は様々な外見的特徴を持ち、固有の魔法で人を襲います。
多種多様なクリーチャーが登場する作品が好きな方にはきっと満足していただけるでしょう。
「スキンショット・M」はそんな狂暴な魔法少女の一人です。
おかっぱ頭で、ファミコンキャラのようなデフォルメされた見た目をしています。
効果音やせりふの書体を見る限り黎明期のゲームグラフィックがモチーフになっていることに間違いはないでしょう。
ハンドガン型のステッキから相手の皮をはがす光線を放ちます。
漫画においては数コマ程度の登場。
出番は少ないものの派手な殺害シーンなのでインパクト大です。
ドット絵『スキンショット・M』の説明
本作は「ファミコン風」のドット絵になっています。
スキンショット・Mのデザインからファミコン風グラフィックにしようと思いつきました。
逃げ惑う人々を殺害する原作シーンをアクションゲームのように表現しています。
ファミコンのグラフィックには様々な制限がありますが、今回重視したのは色です。
他の制限は気にする程度にとどめたため、完全にルールに則ったドット絵にはなっていないと思います。
あくまでファミコン風ということで、ご了承ください。
演出で大失敗
ドット絵でスキンショット・Mの魔法を受けた人は、皮膚を置き去りにして吹き飛んでいます。
実際は逆で、皮が吹き飛ぶのが正解でした。
大変なミスです。
ドット絵完成後に漫画を読み返して気が付きました。
先週に失敗記事を書いた矢先にこれは、恥ずかしい……。
こだわりポイント
スキンショット・Mと人間たちで画風を変えているのがこだわりポイントです。
魔法少女は人ならざる存在なので現実世界から浮いて見えるだろうということでそうしています。
スキンショット・Mは主線なし、人間は主線ありで描きました。
スーパーマリオのようなデフォルメ寄り、悪魔城ドラキュラのようなリアル寄りで描き分けたイメージです。
人間を2色で塗らなければならなかったのに対し魔法少女は3色で塗り分けできたので、ドット絵の主役が引き立ちました。
ファミコン風のドット絵とはなんぞや
私がファミコン風のドット絵を制作したのは今回が初。
使える色が限られる、低い解像度の中で表現しきらなければいけないということは漠然と分かっていましたが、具体的にどんな制限があるのか全く知らず。
ファミコンの仕様を勉強しながら制作しました。
以降の記事は勉強内容のまとめです。
私なりにかみ砕いた結果をアウトプットしつつ、ドット絵『スキンショット・M』でどうしたのかを合わせて説明していきます。
ファミコン仕様調査にあたって以下のサイトを参考にさせていただきました。
貴重な情報を公開していただきありがとうございます。
私の理解力不足により記事には曖昧な内容や誤りがあるかもしれませんので、詳細を確認したい方は本家サイトの閲覧をおすすめいたします。
ファミコンの色
ファミコンの色は52色用意されており、その中から選んで使う形式になります。
ドット絵制作においては色を作った状態からスタート、といえるでしょうか。
ドット絵『スキンショット・M』では魔法使いの森様に掲載されているカラーを使用しました。
「ファミコン カラーパレット」で検索すると情報がたくさん出てきますがRGB値はまちまち。
ファミコン風のドット絵を描くにあたって色相や輝度、色数さえ守れば厳密なRGB値は気にしなくていいかもしれません。
実機においてもテレビ画面に表示される色合いはRGB値と異なっているでしょうしね。
スプライトのパレット
52色用意されていると述べましたが、自由に使えるわけではありません。
まず、ファミコンは1キャラクターに1つのパレットを割り当てる仕組みになっています。
パレットには4色設定できるものの、1色は透明色なので実質3色しか使えません。
キャラクター画像は8×8pxを1単位としており「スプライト」と呼ばれます。
全てのスプライトに対して作成できるパレットは4つまで。
52色用意されていても、3色×4パレット=12色しか使えないということになります。
しかも1スプライトに1パレットという関係性があるため、4通りのパレットを駆使して全てのスプライトを描き切る技量が必要です。
全く違う色のキャラクターを作画しようとすると、イメージ通りのパレットがなくて困る事態に陥ります。
ドット絵『スキンショット・M』においては主役の魔法少女用に1パレット。
他キャラクターはただの犠牲者であり色にこだわりがないので、記号的な判別しやすさを優先してパレットを作りました。
BG画面のサイズ
スプライトを配置するBG画面は、256×240pxのサイズを持っています。
これが画面の解像度と認識しました。
上下8pxはテレビのハード仕様で表示されないことから、256×224pxの範囲内で作画するのが定石だったとか。
そこでドット絵の全体サイズを256×224pxにしました。
BG画面にはパレットと別に背景色を設定できるらしいので、紫を選んでいます。
BG画面のパレット
BG画面にはキャラクター(スプライト)のほか、背景や一枚絵が表示されますよね。
これらBG画面用の画像には、スプライトと区別された4パレットを使用できます。
ドット絵『スキンショット・M』のBG画面用パレットは以下。
コンクリートジャングルなのでグレー系統だけで作画できる背景でしたが、白・グレー・黒で構成された似たパレットばかりになってしまいました。
どんな状況にも対応できるパレットを構築するのは本当に難しいです。
今回のドット絵だと妥協できましたが本来のファミコンソフトは実装する全ての背景を4パレットで賄わないといけないでしょう。
まさに職人のなせる技。
なお、スプライトは8×8pxサイズ単位でパレットを紐づけていましたが、BG画面は倍の16×16px単位でパレットを指定するそう。
ドット絵『スキンショット・M』では意識していたもののチェックはしていないので、守れていない場所があると思います。
今回はそこまでのドット絵ということで、ひとつ。
画像配置の制限
スプライトやBG画面には配置に関する制限もありました。
例えば画像を配置できる数には上限があるそうです。
ただし、その「上限」が1画面内に配置できる画像数の天井によって発生するのか、内部的に保持しておける画像パターンの最大数によって発生するのか判断できなかったので、今回はこだわらない方針にしました。
スプライトが前者、BG画面が後者だと思っているのですが定かではありません。
私はいつも好き放題にドット絵を描いているので、ハード制約を意識した制作は新鮮でした。
ルールを破っていないかチェックしながら描くのは意外と楽しかったです。
ファミコンの仕様を学べたのも大きな収穫でした。
当時の技術をまとめてくださっている方々に改めて感謝いたします。
最後は等倍のドット絵でお別れです。
次の記事でお会いしましょう。