6月に入りましたね。
涼しい日が多かったので、もしかして去年ほどの暑さはないのかな?なんて楽観視をし始めています。
昨年が異常値だったと信じたいです。
……と、不確定要素にすがっても仕方ありません。
最近のドット絵はホラー題材を優先で。
季節感を大事に、そのまま夏を迎え撃つ構えです。
本記事およびドット絵にはビデオ版『呪怨』のネタバレが含まれます。
今年8月にリマスター版が劇場公開されるらしいので、完全初見で楽しむ予定の方は念のためブラウザバックを推奨します。
許容いただける方はぜひご覧ください。
一応、クリティカルな表現は避けたつもりです。
日本ホラーの金字塔となった『呪怨』シリーズはビデオから出発!「柑菜」のエピソードがショッキング

タイトル:『柑菜』
制作時間:29.4時間
『呪怨』は清水 崇(しみず たかし)監督によるホラー作品です。
強い怨みを抱いたまま死んだ伽椰子(かやこ)の呪いが人々を取り込みながら広がっていくというストーリー。
かつて伽椰子が住んでいた家を起点にして住人やその知人、不動産屋といった関係者が次々と死亡・失踪していきます。
幽霊の直接描写が控えめなJホラーでありながらも、強烈な見た目の伽椰子がしっかり姿を見せて暴れてくれるのが魅力です。
それもあって本作の幽霊はマスコット的な側面もある人気キャラクターになりました。
今や『リング』の貞子と並ぶ日本ホラー界のシンボルではないでしょうか。
さて、映画やドラマ、ゲームにもなった『呪怨』ですが、ビデオからスタートしたのをご存じですか?
布団の中で襲われるシーンが有名なあっちは劇場版。
知名度こそ劣る印象はあるものの、実はビデオ版の方が怖いんです。
犠牲者視点のオムニバス形式
「犠牲者視点で描かれるオムニバス形式」のフォーマットはビデオ版で完成していました。
各エピソードは登場人物が伽椰子に遭遇し命を落とすまで。
全滅の展開はシリーズ開始時点からの既定路線なんですね。
犠牲者は呪いに取り込まれ、次の獲物を狙う際に利用されることになります。
犠牲者が呪いの一部に:『柑菜』のエピソード
私が思うビデオ版のベストエピソードは『柑菜』です。
柑菜(かんな)は伽椰子が住んでいた家に引っ越してきた家族の娘で、ウサギの飼育当番中に伽椰子に殺害されます。
そんなことはもちろん知らない母親が柑菜の帰宅に気付くも、なんだか様子が……というお話。
ここの柑菜はすでに呪いの一部という考察が有力です。

血まみれの柑菜が正面を見せずに階段を上っていくシーンは怖すぎます。
幽霊による物理的破壊は珍しかったため、シリーズの恐怖度を押し上げる要因になっていましたね。
当時は「幽霊なのにこんな殺し方するんだ……」って震えました。
母親役の女優さんの演技も光ります。
変わり果てた娘を目視した時の慟哭が、単純な恐怖以上の感情を伝えてくれました。
そりゃそんな悲鳴も上げるよと思うくらい柑菜がすごいことになっているので、ぜひ実際の映像でお確かめください。
ドット絵の説明

この作品はビデオ版『呪怨』のエピソード『柑菜』を再現したドット絵です。
母親が娘・柑菜の帰宅に気が付くも、床に落ちる血から異変を察するシーン。
2階へ上がっていく柑菜の背中を追います。
なお、このドット絵に伽椰子は出ません。
姿を拝みたい方は本編を。
アニメーションのループ優先でモーションを取捨選択

実際は柑菜がフラフラと2階へ向かうシーンですが、ドット絵では階段を上る動作をバッサリ捨てました。
これはアニメーションループの都合。
2階からスタート地点に戻すのが難しいので。
傷ついてフラフラとした動きは再現したかったため、上半身のモーションだけ残しました。
ただやはり、歩きながらふらつくのと比べて物足りないかな、とは思います。
日差しは重要なファクター

今回こだわったポイントです。
日が出ている時間帯でも普通に呪い殺されるため、「明るいはずなのに不気味さを感じる作品」が『呪怨』でした。
柑菜のエピソードも日中の出来事です。(夕方くらい?)
この雰囲気を大切にしたいと考え、ドット絵に日差しを描き込んでいます。
光を重視した作品づくりはしてこなかったので完成度が不安ですが、ドット絵特有のだましパースなので不自然さも紛れるでしょう。
多分。
コマを使いまわしてゾンビみたいな動きを再現する
家に戻ってきた柑菜はゾンビみたいにぎこちない動きになっています。
身体が破壊されていること、呪いに動かされていることの示唆なのでしょう。
アニメーションを描き下ろすのは大変そうですよね。
少しでも楽にできないかと、コマを流用する方法を考えました。
正常時を想定したモーションを最初に作成
今回は上半身のみに絞った動き。
けがという障害がない場合、いわば正常時のモーションから作成します。


正常というのはあくまでアニメーションのスムーズさの話で、動きの異常さはちゃんと演出しましょう。
日常生活ではちょっとあり得ないくらい、上半身を大きく揺らすようにしました。
動作が阻害されるとどうなるかを考えてみる
ゾンビみたいな動きが、けがによってモーションが阻害された状態と仮定します。
それが次の動作に与える影響を考えてみました。
おそらく痛みや機能低下によって姿勢を維持できないのではないでしょうか。
ゲーム的に表現するなら次の動きが途中キャンセルされ行動前に戻る、といいますか。
つまり、ところどころに前コマに戻る瞬間を差し込めば、ぎこちないモーションに見えるのでは?という理論です。
巻き戻るコマをアニメーションに仕込む
動作を巻き戻すコマを正常モーションに挿入してみました。
赤枠が追加部分です。


例えば本来は
1 → 2 → 3 → 4 → 5 → 6 → 7 → ……
と順番に進むところ
1 → 2 → 3 → 4 → 5 → 6 → 5 → 7 → ……
のように6の後に再び5を挿入しています。
2回目の5の後に6ではないのは、より勢いを付けて目的の姿勢(7)に持っていった感を出すためです。
寝た姿勢から上半身を起こすのに失敗したら、次は反動をつけるなど1回目より力を込めますよね。
そんなイメージです。
静止で緩急をつける
動きはちゃんと固くなりましたが死体にしては切り返しが早すぎます。
いったん静止する時間を設けました。
具体的にはコマ2とコマ11。
上半身を前および後ろに曲げきったタイミングです。


次動作まで猶予がある様子が機械的で、生者らしさが薄れたのではないでしょうか。
これにて完成です。
冒頭に触れましたが8月にビデオ版『呪怨』リマスターが劇場公開されるそうです。
25年を経て初だとか。
資料を探している時に知って驚きました。
ビデオ版、お前マジでビデオ止まりだったんか……
間違いなく名作ホラーなので、せっかくの機会、ぜひ映画館に足を運んでみてくださいな。

調べたところアマプラとかでも配信しているみたいです。
映画館に行けない方はそちらでどうぞ。