今回はゲーム『Lobotomy Corporation』のドット絵です。
何度も取り上げているタイトルなので説明は省くとして。
デフォルメされているのでディティールより表現方法に重きを置きやすく、制作における受け幅が広いのがうれしいですね。
例えばソシャゲのキャラクターなんかは装飾品の量がえげつなくて、描き込みからは絶対に離れられませんから。
題材に困ったらロボトミー。
私の今の流行はこれです。
しかしながら最近描けていないタイトルが多くなってきたので、次からはタイトル決め打ちでいいかもしれません。
前置きはこのくらいにして、それでは、どうぞ!
ゲーム『Lobotomy Corporation』から、実は影が薄いアブノーマリティ?「宇宙の欠片」のドット絵
タイトル:『宇宙の欠片』
制作時間:7.5時間
『宇宙の欠片』は地球外物質で構成されたアブノーマリティ。
ドット絵は宇宙と同化しているので判別しづらいですが、実体はこちら。
職員の作業品質が良くないと収容違反を起こすシンプルなキャラクターです。
職員がパニック状態になっても脱走しますが通常はそうならないように人員を選択するので、ほぼ機能しない条件と言えるでしょう。
リスクレベルも低く、下から2番目のTETH。
ゲーム始めたてであっても特に脅威ではなく、危険でない故にこのゲームではかえって影が薄い、そんな印象です。
序盤に出会えたなら、こいつでしっかり鍛えましょう。
ドット絵『宇宙の欠片』の説明
本ドット絵は過去に制作した『銀河の子』と同シリーズのつもりで制作しました。
宇宙モチーフのアブノーマリティ同士なので
- 作品のサイズ
- キャラクターの配置
- 背景の内容(宇宙)
に共通点を持たせています。
『銀河の子』では画面を点滅させていたのに対して『宇宙の欠片』はノイズ演出に変更。
未確認物体感を強調しました。
こだわりポイント
『銀河の子』と共通コンセプトで制作した本作ですが、全く同じではドット絵の見どころや、制作で得られる経験がないと言っているようなもの。
本気で手を抜けば背景の宇宙を使い回す選択肢もありますからね。
そこで、背景として別タイプの宇宙を描きおろすことにしました。
『宇宙の欠片』では「星雲」を主役に。
色も1系統に絞らず赤・青・緑の3色を組み合わせています。
『銀河の子』とは印象ががらりと変わったと思うんですが、どうでしょう?
細かな星のアニメーションの制作手法
宇宙は何度も描いてきた題材です。
暗い地に明るい星の組み合わせは単純に見た目が良く、きれいな作品に仕上がるので重宝しています。
しかしながら同じ題材を何度も描くというのはスキルとして定着するメリットはあるものの、他題材の練習機会や新しい発見がなくなりがちというデメリットも。
そこで似たコンセプトのドット絵を描く際には何か新しい要素を取り入れられないか、必ず考えるようにしています。
どんなにささいであっても「ここが今回の挑戦個所だ」と説明できれば、一応は芯が通りますからね。
今回の後半記事では、これまで地味~に手法を更新してきた「細かな星のアニメーション」について記載しようと思います。
宇宙を描くときの基本方針
アニメーション付きの宇宙を描くにあたって、私は大きく2つの構成要素に分けて考えています。
- 星雲や天の川、惑星といった宇宙の全体像を表現する下地
- 星や隕石など、アニメーションを想定した細かいオブジェクト
1項に2項を重ね合わせてアニメーション付き背景を実現することがほとんどです。
下画像の例では1項として星雲を、2項として星を用意しました。
星のアニメーション
「星のアニメーション」は先に述べたように、星雲や天の川といった下地となる宇宙の画像に重ねることを想定して制作します。
星を分類すると大きく2種。
- 大きい星
- 小さい星
「大きい星」は主に十字や円の形状で作画し、明滅に応じて広がりを見せるように動きをつける場合がほとんどです。
一方の「小さい星」は1ドット構成。
色を変更するのみでサイズの変化はありません。
大きい星に比べると簡単そうですが、いざ描いてみると実はやっかいです。
小さな星のアニメーションを描くときの課題
小さい星のアニメーション用に並べて描くと、下のようになるでしょう。
(単純化のためにドットの色をコマごとに統一しています)
ドットは全コマで同配置、色はコマごとに変更しています。
制作時は1コマ目が完成したら次のコマにコピペして色変更、を繰り返す流れになるでしょうか。
この簡単そうな作業、制作していると以下のような問題が発生しました。
- 数が多いので、色変更前後のドットを混同してしまう。
- 対象が小さいので色の違いが分かりづらく、修正済のドットを判別しづらい。
先ほどの例ではコマ単位でドットの色が決まっていましたが、実際の作品は同じコマ内でもドットごとに色を変えています。
「1コマ目のこの位置のドットは赤色で、こっちのドットは青色。
次のコマになるとこの位置のドットが青色になって、逆にこっちは赤色に……」
なんてやっていたものですから漏れが頻発したり、確認作業に時間がかかっていました。
宇宙側に細工する
ごく小さなドットが散らばる画像を量産する方法はミスを招きやすいと判断。
そこで宇宙画像に手を入れて対応することにしました。
まずは星の位置を決め、ドットを配置。
透過色に変更すれば宇宙画像に無数の穴が開いた状態になります。
下層に明るい色(ここでは白)を挿入すれば、白い星が配置された画像になります。
星を点滅させたいなら下層をアニメーションさせればOK。
この方法の良いところは星の位置と点滅の仕方をそれぞれ一括で管理できるので、全て問題ないか全て駄目かの2つの結果しか発生しないところです。
特定の星だけミス、という半端がありません。
星の色をそれぞれ変化させる
先ほどの例では、全ての星の色が同じように変化していきました。
自然物でこれは不自然です。
できることならランダム性を持たせたい。
そこで、下層に配置する画像をチェック柄にしました。
穴の位置によって露出する色が違うのでそれぞれの星が違う色になるだろう、という寸法です。
チェック柄ですから正確には規則性が存在しますが、上層の宇宙画像に隠れて大部分は見えないので違和感はあまりないと思います。
位置による明暗差をつける
ここで上層の宇宙画像を見てみましょう。
色が異なる3つの星雲が接しています。
星雲の中心は明るく、外側に行くほど暗くなっているので、中心部から最も離れている境界部分は暗くなっていますよね。(赤枠内)
この範囲にある星の色も星雲の暗さに合わせたいものです。
そこで、下層のチェック柄に細工を。
星雲の境界部分が重なる範囲を暗色にしました。
どうせほぼ隠れるので範囲はざっくりで問題ありません。
全ての星が明るく光っているよりもメリハリがついたと思いませんか?
ドット絵『宇宙の欠片』では宇宙の表現を変えてみました。
表現が違うと描き込み内容も変わってくるので、時には未経験の題材を描くのと変わらない状況になります。
しかしながら今回はかなりのスピードで完成させることができました。
題材が同じだと制作速度も向上すると分かってきていたものの、自分でも驚きです。
キャラクター自体の描き込みが少ないタイプの作品だったことも要因の一つかもしれませんが。
それでは今週はここまで。
次の記事でお会いしましょう。