格闘ゲームでは、プレイヤーの使用を想定しない強力ボスがつきものですよね。
今回は、格闘ゲームエンジン『MUGEN』における凶悪キャラのドット絵を公開します。
pixivに投稿した過去作の一つです。
後半は、ドット絵で「手」を描く際のデフォルメ方法について書いています。
ドット絵レベルにデフォルメされているキャラクターでも、見栄えよく描くには手の表現が重要なのです。
ぜひ見ていってください。
MUGEN凶悪キャラドット絵
タイトル:『ドット絵でMUGEN凶悪キャラ(大盛り)』
制作時期:2012年~2013年
凶悪キャラは「観る」専用のキャラクターといって差し支えないでしょう。
凶悪キャラの戦いはもはや格闘ゲームの範疇から逸脱し、プレイヤーが立ち向かえるものではありません。
MUGENには観戦モードがありCPU操作キャラ同士を戦わせることができます。
そうやってキャラクターの演出を楽しむのです。
一時期のニコニコ動画には凶悪キャラの対戦動画がたくさんありました。
容姿、演出、キャラクター設定、制作者のこだわり、性能の調整加減といった面で私が贔屓にしていた凶悪キャラたちをドット絵で描いた作品です。
コンセプト
全キャラクターを同一規格のドット絵で表現することを目指しました。
具体的には、当時流行っていた同人ゲーム『東方緋想天』風の頭身でデフォルメしています。
MUGENのキャラクターはオリジナルから版権まで出自が様々で画風が異なります。
頭身の違いは特に顕著です。
ドット絵の画風を合わせれば、MUGENという共通の世界観での結びつきをより強固にできると考えました。
また、本作のテーマはいわば「私の好きな凶悪キャラリスト」です。
統一感があるキャラクターをビシッと並べたい思いもありました。
キャラクター一覧
描いたキャラクターを紹介します。
1行目
左から
- シューティングスター魔理沙
- グローリア(変身後)
- ミズチ-タイプ-M
- マニー
- ポルターガイスト
- STG0394
2行目
左から
- サワキちゃん
- 竜子
- 保炎龍
- 欠損少女
- 旧支配者パチュリー
- シルヴィ
3行目
左から
- ウイング白夜
- ダークモリガン
- ルシェカ
- バラム
- あうん
- 黑 魅霊
4行目
左から
- Aura
- イツァムナー
- 現実
- グリス・リソール
- スーパーメカ翡翠
- マハタヨ
5行目
左から
- LegendaryRyu
- 竟
- スーパーメカゲニ子
- フランドール・バーンシュタイン
- 神みずか(問題児タイプ)
- 悪玉
うーん、思い出深い!
搭載している技術に応じて凶悪キャラにもいわゆる「階級」がありまして、同階級のキャラ同士で戦わせるのが普通でした。
竜子、LegendaryRyu、フランドール・バーンシュタイン辺りの階級が、格闘しているんだけどしていないド迫力バトルでおすすめですよ。
凶悪キャラには、MUGENのバグを利用して相手を倒すキャラもたくさんいます。
バグを利用する程度も階級分けの重要な要素でした。
形状を判別できる「手」を描こう
ドット絵キャラクターの手を描くときはそのスペースの小ささゆえ、指一本一本まで描けない場合がほとんどです。
そんなとき何を目指して手を描いていけばいいのか。
ズバリ、そのドット絵を見た人が手の形状、手の表情を判別できることを目指しましょう。
初心者は手を安易に簡略化しがち
初心者ドッターがやりがちなパターンに、○ラえもんのような団子状の手を描いてしまうものがあります。
様々なパターンの手が必要ない一枚絵を描く際に陥りやすい失敗です。
おそらくは、デフォルメした手=団子状のかわいい手というイメージがあるのでしょう。
これはかなりもったいないです。
「手」の表現は、作品全体の印象を左右する部位の筆頭と考えています。
簡略化された手によるデメリット
私も手をよく失敗します。
単純にド下手なこともあれば、後工程になっておかしさに気がつくケースもあります。
竟(キョウ)ちゃんに手伝ってもらってデメリットを探っていきましょう。
竟(キョウ)は5行目左から2番目にいるキャラクターです。
キャラの仕草を表現できない
手は情報量が多いパーツです。
手を過剰に簡略化すると手の表情を表現できず、仕草が分かりづらくなります。
さっそく、竟(キョウ)に手を見せてもらいましょう。
Aがド○えもんのように団子状に簡略化した手、Bが形状を意識して描いた手です。
手首から下は全く同じです。
Bの方が、どういう意図で手を前に出しているか理解できると思いませんか?
少なくともどんな状況なのか絞り込めますよね。
今回は「手を見せて」とお願いし、それに答えてくれた状況です。
Aの手は握りこぶしっぽく、手を見せる動作として不自然で状況を連想できません。
描き込み方法を決めづらい
団子状の手は実物の手と形状があまりにも乖離しています。
立体感を把握できず、塗りを含む描き込み工程の難易度が上がります。
もう一度見比べてみましょう。
これだとわかりづらいですね。
Aでもまあ悪くはないと思う人もいるでしょう。
では、竟(キョウ)の上着を半袖に変更してみます。
手首から下は全く同じです。
さて、気になるところはないでしょうか。
Aの手首(矢印の部分)のドット、必要性を感じますか?
Bは、親指付け根部分のふくらみと手首の境界を表すドットだと見当がつくでしょう。
Aの手の形状では、このドットを置いて表現できるものがほぼ無いように思います。
では、該当のドットを消してみましょう。
おお、すっきりしましたね。
Aはこれが正解のような気がします。
腕の立体感もそこまで悪くありません。
ただ、今度はさっぱりし過ぎていて腕全体が描きかけに見えなくもない……。
棒みたいな腕になり他部位のクオリティとギャップがあるので、雑な印象を受けるのでしょう。
描き込みを増やしてみましょうか。
腕の影を追加してみましたがイマイチですね。
なじんだようには見えますが、影色のせいで塗りが汚く見えます。
腕のなめらかさがなくなりました。
このくらいの面積では影をつけないほうがきっといいのでしょう。
皆さんならどう塗りますか?
Aは実物という指標がないため、どう描き込んでいけばいいのか悩むことになります。
腕のクオリティが手の描き込みに引っ張られていることも分かりました。
長袖だと手と袖の境界部分に描き込みが発生しているので、半袖ほど不自然に見えなかったわけですね。
Bは腕の先端にある「手」が描き込まれていることで、特別に何かしなくても腕まで描き込まれているかのような安定感があります。
見た人に妥協した印象を与える
最期は印象の問題です。
手は人体の中でも難しい部位です。
手をいい加減に描くと、見た人に妥協やごまかしの印象を与えかねません。
イラスト界隈でも「手を後ろに隠したバストアップイラストばかり描く」なんていうあるあるネタが存在するくらいですから、創作に携わる人ほどそう捉えるでしょう。
説明で使用した竟(キョウ)は、作品中の竟(キョウ)よりも小さいサイズで描かれています。
そんなサイズのドット絵でさえ、手を描き込んでいた方がそれらしく見えると分かっていただけたと思います。
どうすれば手らしく見えるか
冒頭で述べた通りドット絵では大抵の場合、指を一本一本描き込むことができません。
では、どうすれば「デフォルメされた手」を描けるでしょうか。
答えは簡単で、手の形状を再現するように描くのです。
重要な指は限られる
ドット絵で手を描くのにすべての指を描ききる必要はありません。
個別に描くべき指は
- 親指
- 仕草を表現する要素として必要な指
の2パターンで充分です。
それ以外の指は「その他の指」としてひと固まりで描いてしまえます。
親指を描けば手に見える
まずは「親指はここ」と分かるように描きましょう。
親指の位置で手の向きを判別できるようになり、手のシルエットが完成します。
上の竟(キョウ)も、詳細に描いているのは親指だけです。
残りの指はひと固まりで描かれています。
それでも手のひらを上に向けていると充分にわかりますよね。
仕草を表現するための指を描く
キャラクターにある動作をさせたいとき、手の表情によって絶対に描かなければいけない指が存在します。
例えば「指を差す」動作ならば、人差し指を描かないと成り立ちません。
2パターンの指差しポーズを描いてみました。
どちらの手も親指、人差し指、その他の指(ひと固まり)で構成されています。
右側の「その他の指」は影色で描かれているのでわかりにくいかもしれませんが、指を一本一本描いていないことはわかっていただけると思います。
ここまで形をとれたら、あとは全体の画風に馴染むように細かく修正していけばいいのです。
まとめ
手のデフォルメは、形状を判別できることが最低ラインと考えています。
指をすべて描く必要は基本的にありません。
- 親指
- 仕草を表現する要素として必要な指
の2つを描けていれば充分に手を表現できます。
残りの指は固まりで表現しましょう。
団子状の手は超低解像度のドット絵や、ゆるキャラを描く場合にとる表現方法だと捉えましょう。
手をうまく表現できるとドット絵の見栄えがぐっと良くなります。
手の描き方で悩んでいる方の一助になれば幸いです。
私もさらなる上達を目指して頑張っていきます。