今回は、MUGENに参戦しようと過去に制作した格闘ゲーム用のドット絵を公開します。
結果を先に言いますとキャラは未完成で、見事に挫折しております。
これはいわゆる「供養」というやつです。
作品公開に合わせて、なぜ挫折したか、どうすれば良かったかを改めて考えます。
MUGENオリジナルキャラドット絵『オメガカンフーマン』
タイトル:『オメガカンフーマン』
作成時期:2009年~2010年
オメガカンフーマンは、「オメガトムハンクス」という既存キャラのオマージュです。
MUGEN付属の初期キャラ「カンフーマン」を、オメガトムハンクス風に仕立てています。
オメガトムハンクスのデスマスクを被り、額には『ジョジョの奇妙な冒険』のエイジャの赤石。
仮面の色はロマサガ3のフォルネウスカラー。
一応は、オリジナルキャラクターになるでしょうか。
コンセプト
「一般の格闘ゲームキャラのように豊富なアニメーションを持つオメガトムハンクス」というコンセプトで、オメガカンフーマンを制作しました。
元キャラのオメガトムハンクスはアニメ枚数が非常に少ないキャラです。
それがコミカルに動き回ったらさぞかし面白いだろうと考えました。
冒頭で述べたように、格闘ゲームキャラとしての制作を断念しています。
完成している分のドット絵を、一枚絵にまとめなおしたものが今回の作品です。
モーション説明
各アニメーションについて補足します。
上段:攻撃モーション
いずれも遠距離攻撃を想定していました。
オメガなカンフーマンはカンフーなんて使いません。
理不尽な弾幕で遠距離から攻撃します。
中段:ニュートラルモーションと移動モーション
左から、前進モーション、ニュートラル(棒立ち)モーション、後退モーションです。
ニュートラルモーションは、オマージュ元のオメガトムハンクスから変更し、より動くようにしています。
前進および後退はオメガトムハンクス準拠のモーションで制作しました。
オメガトムハンクスには、この3種とジャンプ、しゃがみモーションしか存在しません。
つまり、オメガカンフーマンのほとんどのモーションが私の描きおろしなのです。(どや顔)
下段:やられモーション
左は上方からのダメージ、右は下方からのダメージを想定しています。
コミカル感を出そうと頑張ったモーションです。
格闘ゲームドット絵の挫折原因は描き直し
格闘ゲームのドット絵と聞くと、真っ先に膨大な作業量を思い浮かべます。
MUGENのキャラクターには、少ないものでも200枚程度のドット絵が使われています。
400~500枚のドット絵を使っているキャラクターもざらにいます。
よほどの愛や情熱がなければ、同じキャラクターを数百枚も描き続けられないでしょう。
しかし私の場合はこういった「予定している作業量」でなく、「描き直し」が挫折の原因になりました。
制作済みのドット絵を修正したくなる
キャラクターを作り始めたころのドット絵と最新のドット絵を比較すると、どうしても最初に描いたドット絵が見劣りしてしまいます。
新しいドット絵を描くたび、「修正」「改善」という作業が自分の頭の中に積み上がっていきます。
やがて、一向に減らない作業に絶望して挫折に至るのです。
そもそも初期のドット絵はクオリティが低い
数十枚、数百枚もドット絵を描いていれば、制作開始時点の腕前が未熟なほど画力がメキメキ向上していきます。
同じキャラクターを描き続けるわけですから、要領もわかってきます。
初期と後期のドット絵のクオリティに差が生まれるのは仕方ありません。
成長を喜び、描き直しを受け入れましょう。
初期と後期で方針が変わっている
他に変化するものとして、制作にあたっての「方針」が挙げられます。
「方針」は表現として絵に反映されるので、方針が変わる前後のドット絵で何らかの差が発生するのは必然です。
そういったドット絵をつなげてみるとほころびが目につくようになり、このほころびを「描き直したい」と感じるのです。
オメガカンフーマンの実例を挙げてみます。
方針が変わると表現も変わる
以下のドット絵を見比べてみてください。
Aが初期に作成されたドット絵、Bが後期に作成されたドット絵です。
AとBでは
- 頭部の立体感
- 手のデフォルメ度合い
の2点で描き方が変わっています。
横向き頭部の形状を考えて立体感をつけるようにした
頭の向きが異なるとはいえ、Bと比べるとAの頭部は平べったく、立体感が少ないと感じませんか?
Aの初期絵は、オマージュ元のオメガトムハンクスと同様のシルエットで制作しました。
頭部の形状なんて考えていません。
「オメガトムハンクスと同じにする」方針で描いています。
一方、Bの後期絵は、横から見た頭部の形状を決めて描いています。
ここでようやく「立体を考えて描く」方針にシフトしました。
オメガトムハンクスに存在しない横向きのシルエットを描く段階になって、「オメガトムハンクスと同じにする」方針が成り立たないと気づいたのです。
手の形状が分かるレベルまで描き込むようにした
Bと比べてAの手は指の意識がなく、形状も曖昧だと思わないでしょうか。
Aの初期絵は、頭部と同様に、オマージュ元のオメガトムハンクスに合わせた表現で手を描きました。
Bの後期絵は、攻撃に合わせて手の表情が分かるように描いています。
オメガトムハンクスは遠距離攻撃しかしないので手の重要性が低く、手のバリエーションが3パターンほどしか存在しません。
オメガカンフーマンは違います。
名前の通り元々は拳法家であり、カンフーっぽい動作をしなければなりません。
手の表情、すなわち、指の動きや拳の形状が重要な要素です。
「オメガトムハンクスと同じにする」方針では手を表現しきれず、描き込み度合いを上げることになりました。
方針が違うドット絵同士を合わせるとほころびが出る
次のアニメーションを見てください。
6番→7番に切り替わったときに、急に頭部の厚みが変わった(薄くなった)ような不自然さがありますよね。
6番と7番で頭部の立体感の描き方を変えているので、こうして変に見えてしまいます。
6番が後期に描いた頭部、7番が初期に描いた頭部であり、それぞれで頭部の立体感の考え方自体が異なっているのです。
6番と7番の間に中間のドット絵を挟んではどうか。
いやいや、そもそも7番の頭部を「厚みがなさ過ぎた」と思っているんだから、不自然な頭部を活かす方向で絵を増やしてどうする。
では、7番と同じ頭部を持つ絵をすべて直すのか。
きっと、7番の頭部から移行する絵も直さないといけないぞ。
ウーム……
こうやって動けなくなって、挫折が近づいていきます。
挫折しないためには完走を優先する
格闘ゲーム用のドット絵を作成するのは、マラソンのようなものです。
どうすれば走りきることができたでしょうか。
私が出した結論は、「予定しているドット絵をすべて完成させるのを優先する」です。
その間、制作済みのドット絵には一切手を加えません。
完成後に
- 最も見劣りするドット絵を1枚だけ選択
- 選択したドット絵を修正
を繰り返していきます。
描き直し量を軽減できる
最も劣っているドット絵を修正すると、ドット絵全体の平均レベルは確実に向上します。
選択→修正→選択→・・・と繰り返すことで、改善要否の基準を全体を見ながら再設定して修正作業をおこなっていけるのです。
描き直し候補のドット絵が許容範囲内に収まり、描き直し枚数を減らせる可能性があります。
1枚のドット絵でみたときは違和感があったとしても
- 動かしてみたら良かった
- 全体で見ると気にならない
こういったことはよくあります。
作品をいつでも公開できる
作品として一通り完成していれば、公開という選択肢が生まれます。
許される環境なら一旦公開するのも手です。
モチベーションアップや、受け手からのフィードバックを期待できます。
描き直しの要否を見直すきっかけになるかもしれませんし、気持ちが切り替わって些細な点を無視できるかもしれません。
デザインを最初に作り込めば手堅い
「方針が変わると表現も変わる」と書きました。
しっかりした人であれば、デザイン画や設定集を作成したうえでドット絵を描き始め、表現のブレを防止するのではないでしょうか。
いろいろな方向から見たオメガカンフーマンの姿を最初に理解しておけば、頭部の立体感を見誤らなかったでしょう。
オメガカンフーマンにどのような動きをさせるか決めていれば、手の表情が必須要素だと最初に気がついたかもしれません。
とはいえ、創作には情熱が大切。
作りたいと思い立ったなら、前準備など無視してすぐに走り出すのもまた真理。
ほどほどに計画し、実行に移していきましょう。
最後に
描き直したいと思うのは、成長あってのことです。
キャラクターが未完成でも経験はそのまま残ります。
そして、悩んで制作したドット絵には愛着がわくものです。
オメガカンフーマンは今見ても、頑張ったなあと思える出来でした。
10年の時を経てオメガカンフーマンに日の光を当てることができ、私は満足です。