夏のホラー企画も4回目になりました。
今回は大人気トレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング(以降、MTGと省略)』のドット絵をお届けします。
それはホラータイトルじゃないだろって?
MTGに存在するクリーチャータイプを思い出してください。
ね、「ホラー」要素あるでしょ?
企画を続けながら緩やかに平常運転へ戻っていくベストな采配。
それでは、どうぞ!
『MTG(マジック:ザ・ギャザリング)』からホラークリーチャー「肉裂き怪物」のドット絵
タイトル:『肉裂き怪物』
制作時間:34.8時間
「肉裂き怪物」は「ウルザズ・サーガ」に収録されたクリーチャーです。
レアリティはアンコモン。
2マナ4/4という破格のスペックを持ちながら、スーサイド系のデメリット能力を持つ黒らしいカードになっています。
ウルザズ・サーガの構築済みデッキのパッケージイラストになっていたので、見覚えのある方は多いのではないでしょうか。
国内TCGではありえない見た目の怪物が描かれたパッケージを手に取ったときの興奮は、忘れられない思い出です。
(当時の構築済みデッキは信じられないくらい弱かったのですが、子供だった私は知る由もなし。)
情報を簡単に入手できるようになった今ではもう味わえなくなった感覚ですよね。
なお、私は肉裂き怪物を使ったことがほぼありません。
グループの中の黒担当でなかったので!
ドット絵『肉裂き怪物』について
8月に入ってから実施している「夏のホラードット絵企画」の一環で制作しました。
MTGのホラーといえばクリーチャータイプ。
順番的には青のカードを制作したかったのですが旧枠の青ホラーは1種類しかいませんし、イメージ的にはやはり黒。
白羽の矢が立ったのが肉裂き怪物でした。
カードをそのままドット絵化して遊び要素のアニメーションを追加した、いつものフォーマットです。
テキスト欄を「肉」に見立てて引き裂かれるアニメーションを加えました。
色が赤いのは肉っぽくしたから。
いつものカード枠に置き換えるとこうなります。
印象が結構違いますね。
背景をどう解釈する?
昔のカードイラストはおそらくアナログ絵。
アーティストの筆のタッチによって背景に何が描かれているのか読み取りづらいことがよくあります。
これはドット絵にする上でなかなかの問題です。
タッチの完全再現は最初から狙わないとして、イラストをドット絵に置き換えるためには「何が描かれているか」の理解が必須。
肉裂き怪物の背景を見て、私は以下のどちらかだろうと解釈をしました。
- 筆のタッチで後ろのオブジェクト(枯れ木?)をかすれさせている。
- 後ろで何かが燃えている。
最終的に選択したのは前者。
肉裂き怪物が生息するファイレクシア次元は機械の世界ですから、赤色は何かの発光だと捉えます。
ファイレクシア次元がいくら荒廃しているとしても、肉裂き怪物の生息地が常に燃え盛っているとは想像できませんし。
皆さんはどう思いますか?
こだわりポイント
肉と血の色を人外のものにしています。
肉裂き怪物はファイレクシア次元の生物でしょうから周辺に人間がいるとは考えにくい。
主な獲物は同次元の生物だと思われますが、それだとファイレクシアによる犠牲者感が薄い。
そこでMTG世界に存在する人外種族をイメージして皮膚や血の色を設定しました。
全体的に赤黒いカラーリングになったところに緑を差せたので、いいアクセントになってくれたかと思います。
血が赤いとスプラッターで不快に感じる方もいるでしょうし、悪くない判断だったかなと。
なお、ファイレクシア人は血の代わりに黒い油が流れているとのこと。
血を黒色にすればファイレクシアの生物を再現できそうですね。
MTGカードドット絵の覚書
私は「MTGのカード」のドット絵を継続的に描いてきました。
その魅力は、なんといっても題材が尽きないことです。
イラストの種類はもちろんのこと、最近はカード枠のデザインまで多種多様。
気分に合わせて題材を選び放題のタイトルといえます。
作品数が増えてきたのでいい機会だと思い、現時点のMTGドット絵について覚書を残しておきます。
描きたいカードとアイディアありき
ドット絵を描くにあたって、そもそも描きたいカードがないと始まりません。
私のMTGドット絵はアニメーションを必須にしていますから、何をどのように動かすかの構想も必要です。
カードとアイディア、2つが揃ってから制作を開始します。
カードの選択基準は主に思い出補正。
子供時代の思い入れがある旧枠カードから選んでいます。
制作済みカード枠の都合で基本5色に絞っていますが、マルチカラーや無色が嫌いなわけではありません。
ちなみにテーブルトップで復帰していたタルキール時代には、カード枠抜きのこんなドット絵を描いていました。
アニメーションのアイディアはカードのフレイバーから。
イラストやテキスト、トーナメントシーンでの使われ方から思いつくケースがほとんどです。
この内容が作品の方針決定に繋がります。
描き込みとアニメーションのバランス感覚
コンセプトに応じてドット絵の描き込みレベルを変えています。
ガンガン動かす予定ならば描き込みを抑え、アニメーションに注力。
描き込みが過ぎると動かすのが大変になりますからね。
反対に、動かすつもりがなければ質感や雰囲気を再現できるよう描き込みをこだわります。
コンセプトによる作品の分類
「アイディア」および「描き込み・アニメーションのバランス」の違いによってドット絵のコンセプトが変わってきます。
基準を明確に定めているわけではありませんが、今は以下3つの分類を意識しながら制作しています。
標準仕様
クリーチャーなど主役の動きは抑えて、小物や背景を動かすタイプ。
アニメーションはテキスト欄を中心に。
イラストの形を崩さないので元カードの雰囲気を楽しんでいただける作品です。
動かさない分、しっかり描き込んだドット絵にすることが多いです。
ドット絵『肉裂き怪物』はおそらくここに分類。
見本画像の個別記事はこちら。
アニメーション仕様
カードイラストを大きく動かすタイプ。
私なりの解釈を反映したドット絵であり、上のドット絵『ダンダーン』ならばクリーチャーの習性(妄想)をアニメーションに落とし込んでいます。
紙では動いていなかったものが動くという意外性を楽しんでいただく作品。
ただし、ドット絵を一時停止すると本来のカードイラストから乖離した状態が発生するので、よく動くからといって一概に優れているとはいえません。
見本画像の個別記事はこちら。
ギミック仕様
カードから連想したメタ的なアイディアを反映するタイプ。
例えば上のドット絵『天秤』ならば、イラストの天秤がカード枠位置のバランスを取っています。
MTG世界には「カード枠」なんて概念はありませんから、メタ的です。
ネタを読み取って楽しんでいただく作品。
狙っていないのに白のカードばかりになってしまいました。
見本画像の個別記事はこちら。
「カードのドット絵」の線引きは?
カードのドット絵を制作する上で気を付けている点が一つ。
それは、カードイラストから逸脱するアニメーションを付けないこと。
突飛な動きを付けるとイラストの意味が変わってしまう可能性があります。
さらにいうなら、停止時に元カードとかけ離れた状態になる瞬間が存在することも好ましくないというのが私の本音です。
下画像はアニメーション重視のドット絵2枚。
特定のコマ(下側)を取り出すとクリーチャーの姿さえ消えています。
もしもこのシーンだけを閲覧する方がいたら、元カードの印象ダウンにもつながるかもしれません。
イラスト部の動きを最小限にしたドット絵を標準に位置付けているのもこのため。
本来のカードに一番近いからです。
自分の解釈を通すことも多いですが、カードが持つ特性や魅力を損なわないという判断あってのこと。
元の良さが失われては何の意味もありません。
「カードをドット絵にする」というコンセプトを掲げる以上、付加価値を提供しつつも元カードから離れ過ぎないようにしたいですね。
カードをドット絵にするのは楽しいので今後も続けていくつもりです。
似たコンセプトばかりになっては見る方もつまらないと思うので、カードごとに方向性が全く異なってみえるくらいの演出を考えていきたいです。
次に覚書を書くときに分類がもう1つくらい増えていれば面白いのですが。
それでは今回はここまで。
次の記事でお会いしましょう。