季節は本格的に夏。
ホラーシーズンが到来しましたね。
今年も8月はホラー関連のドット絵で攻めたいと思います。
(今はまだ7月だけど)
私は怖い作品が好きで、そうなった原因のほとんどは子供の頃に立ち読みしていたホラー書籍にあるといっても過言ではありません。
好きだった作者は千之ナイフさん。
絵がきれいで設定もユニーク、何よりやたら怖くて毎回はずれなしという印象でした。
漫画家さんの名前を探す読み方をしたのは、この時が初だったかもしれません。
そんな千之ナイフさんの作品から、人気キャラクター「死太郎くん」のエピソードをドット絵にしました。
ぜひ見ていってください。
なお、死太郎くんは作者さんにとってイヤな子供を具現化した存在だったそうです(笑)
ホラー漫画『死太郎くん』シリーズから「ゲルニカさん」のドット絵
タイトル:『ゲルニカさん』
制作時間:10.7時間
『死太郎くん』は千之ナイフさんの漫画作品。
タイトルの「死太郎」くんというキャラクターが主要人物として登場します。
もともとは読み切りのつもりが反響が大きくシリーズ化されたとのこと。
ホラー漫画であるもののギャグ寄りのエピソードも多く、1話完結型なので怖いものが苦手な方でも読みやすい作品だと思います。
そして死太郎くんシリーズのエピソードのひとつが「ゲルニカさん」です。
ゲルニカさんからの手紙を無視すると呪いにかかり、体のパーツがメチャメチャになってしまう。
というゲルニカさんのうわさが流れて物語がスタート。
マンガ図書館Zにて無料公開されているので、内容はぜひ自分の目でお確かめください。
読んでもらえれば一発なので、説明が楽でいいですね!
ドット絵『ゲルニカさん』の説明
作中で死太郎くんが描いていたゲルニカさんの落書きをメインに据えました。
時間経過で本物のゲルニカさんが出現します。
落書きを被害者に見立てましたが、原作漫画では当然のように人間が襲われます。
死太郎くん
死太郎くんはシリーズ通しての重要人物です。
白い野球帽に白黒しま模様のTシャツ、包丁が刺さったランドセルといういでたち。
ドット絵では後ろ姿のみ登場。
怪異に関係していることが多いながらも死太郎くん視点で物語が語られることはない、謎の存在でした。
呼び水的な何かなのかもしれません。
ゲルニカさん
見た目は黒いマントに坊主頭、顔がピカソの絵みたいにメチャメチャな男です。
(漫画内の説明まま)
ゲルニカさんのうわさが流れ始めるのと同時期に目撃されるように。
果たして、その正体とは……?
こだわりポイント
ゲルニカさんの呪いによって登場人物が右往左往するのに倣い、落書きもピコピコ動かしてみました。
ゲルニカさん登場に伴って印象を変えたかったので色を反転しています。
想像よりも雰囲気が出ました。
フリーハンド感のあるドット絵を描く
ドット絵『ゲルニカさん』の大部分は死太郎くんが道路に描いた「落書き」です。
子供が描いた絵は洗練されていなさが不気味で、引き込まれますよね。
この魅力をドット絵にも引き継ぎたいところ。
しかしドット絵には「ドットを整理」する作業がありますから、思うがままに描かれた画風と相性が悪いように思えます。
後半記事ではフリーハンド風のドット絵を制作した概要と所感を記録しておきます。
作画の流れ
作画の大まかな流れは以下の通りです。
- フリーハンドでラフを描く。
- ドットを整理する。
- アンチエイリアスをかける。
いつもの作業と変わりません。
ただし気にするポイントが少し違ってきましたので、詳細を説明していきます。
フリーハンドでラフを描く
まずはラフを描きます。
ドット絵の作画はほぼドット単位の調整になるのでフリーハンドはこの工程だけ。
これは他のドット絵でも同様です。
ではどこが変わってくるのかというと、今回の題材は白線のみで構成された絵で線の取り方が完成度に直結するので、パーツのバランスや配置をシビア目に調整しました。
いつもは描き込み工程まで棚上げすることもしばしば。
また、後工程のために清書前のラフを複製して残しておきます。
ドットを整理する
フリーハンド感を出す最大のポイントはドット整理でした。
線の太さを不均一にすることを考えながら、ドットを整頓していきます。
例えば本来の作業では以下のような線を許容しません。
赤で示したドットは基本的に余剰であり、線が汚くなる見える原因になるからです。
しかしながら今回はところどころに余剰ドットを残しながら作業を完了させました。
こうした個所は部分的に太いという見え方になるため、フリーハンドによるムラを演出できます。
上の画像から、線の太さがまちまちだという印象を受けないでしょうか。
アンチエイリアスをかける
落書きだからとアンチエイリアスを怠っては、ただジャギが目立つドット絵になってしまいます。
特別な狙いがない限り、いつもやっている処理としてしっかり対応しましょう。
ここでのポイントはグラデーション塗りっぽくなるのを恐れないことでした。
以下画像はグレー背景に薄いグレー線と白線を並べたものです。
このように段階的(白 → 薄いグレー → グレー)に変色していくような並べ方はモアレが発生するので、通常は避けています。
しかし上の画像を、2ドットの太さのうち、半分がグレーになっている白線と捉えるとどうでしょうか。
線の半分が中間色(薄いグレー)になっているため背景に溶け込み、白一色の線に比べて細く見えます。
これを部分的に適用すれば、線の太さを不均一に見せることに一役買うわけです。
アンチエイリアス後の画像ですが、どうでしょう。
線の不均一さがより強調されたように見えませんか?
また、背景のグレーに白色がなじんでチョークで描かれたような雰囲気にもなりました。
フリーハンドのメリット
最後に、フリーハンド表現の利点に気が付いたのでご紹介します。
それは、特定タイプのアニメーション制作がかなり気楽だということ。
今回は、ラフ → ドット整理 → アンチエイリアス の手順で線画を完成させました。
取っておいたラフに再度、ドット整理・アンチエイリアスの作業を実施し、ドット絵をもう一枚完成させます。
同じラフから作ったとはいえ1枚目と2枚目が全く同じになるわけありませんから、2つのドット絵にはわずかな、それでも確実な差が発生しているはず。
(注意:上の見本においては、キャラクターの脚など一部をあえて変更しています)
この2枚のドット絵を交互に再生することで、イラストがふにょふにょ動くアニメーションが完成します。
これは、以前に制作したタマモクロスと同タイプのアニメーション。
キャラクターは動いていないが、作画の微妙な差によって絵自体がゆるく動いているように見せるパターンです。(正式名称はあるのだろうか)
タマモクロスでは完成したドット絵を拡大・縮小してあえて破綻させ、再度描き込むという方法を取っています。
このとき、2つの画像に差異を出すため最初のドット絵と違う線を取りつつも、キャラクターの造形やポーズが崩れないように気を配る必要がありました。
しかしフリーハンドの場合、線あるいは絵自体の乱れこそ醍醐味のため、破綻を恐れる必要がありません。
よって、この手のアニメーションには強い題材だと分かりました。
今回は大好きだった作品をドット絵にできて満足しています。
死太郎くんを取り上げましたが、実は千之ナイフさんのホラー漫画は死太郎くんではない単発系の方が圧倒的に怖いです。
私としてはそちらを読み返したいのですが単行本が見つからず。
マンガ図書館Zさん、頼みましたぞ!
それでは今回はここまで。
次の記事でお会いしましょう。