お正月の浮ついた期間もあっという間に終わってしまいましたね。
社会人の皆さんはお仕事頑張ってください(他人事)。
今回は漫画『魔人探偵脳噛ネウロ』のドット絵です。
本ブログでは初になるタイトル。
少し前に60話くらいまで無料開放されているのを見かけて懐かしさから制作しました。
連載当時はどのジャンルにも当てはまらない内容に困惑したものの、読んでいくうちに魅力に気付いた、そんな漫画です。
ぜひ見ていってください。
本記事には完結済み漫画のネタバレを含みます。
犯人の姿を描写しているのでドット絵を見るだけで危険かもしれません。
これから原作を読もうとしている方はご注意ください。
漫画『魔人探偵脳噛ネウロ』から、連続爆弾魔「ヒステリア」のドット絵
タイトル:『ヒステリア』
制作時間:22.9時間
『魔人探偵脳噛ネウロ』は週刊少年ジャンプで連載されていた、完結済みの漫画作品。
「謎」を糧とする魔人・脳噛ネウロが女子高生・桂木弥子を探偵に仕立て上げ、事件を探しては謎を解いていくストーリーです。
作者は松井優征さん。
今は『逃げ上手の若君』を連載中なので名前を知っている人は多いかもしれません。
タイトルから探偵推理物と考えてしまいがちですが純粋な娯楽漫画です。
推理パートはネウロの超常的な力でサクッと解決。
暴かれた犯人が持つ思想や哲学を、彼らの豹変ぶりと合わせて楽しむのがメインになります。
私も観点に気が付くのに時間がかかりました。
犯罪者の心理なんて知ったことかと思うなかれ。
犯人なりの信念や論理を垣間見ることができ、ちょい役の悪者といえどキャラクターが立っています。
連中には「仇」とか「復讐」といった筋の通った動機はありません。
そこがこの漫画の悪党の良さなのです。
ヒステリア
ドット絵にした「ヒステリア」は作中に登場する無差別連続爆弾魔。
多種の起爆方法を使いこなす知能犯です。
心の中に本能(カレ)が存在し、爆破という形で破壊衝動をブッちゃけています。
自分は本能(カレ)に従う忠実な理性(イヌ)というのがヒステリアの考え方。
正体の意外性、犯罪者としての能力の高さから、好きな犯人を選ぶとしたら私はヒステリアを挙げるでしょう。
ドット絵の説明
ヒステリア要素をふんだんに詰め込んだドット絵にしました。
状況を説明するなら爆破の予行演習といったところでしょうか。
ヒステリアの心象風景を表現しています。
文章はヒステリアの犯行カードから引用。
爆破ターゲットのヒントにつながっている重要なアルファベット1文字を光らせています。
また、犯人の正体に結び付く描写も散りばめました。
一応は探偵漫画なので犯人を推測できる要素を入れられたらと。
まあ、「容疑者が判明した時点で原作漫画を中断してドット絵を見に来たネウロ初見の人」しか活用できないんですけれど(笑)。
ドット絵を先に見てしまった方はぜひ挑戦してみてください。
ヒステリアのデザイン
犯行カードを組み合わせたマスクと犬耳カチューシャ姿のヒステリアを描きました。
これは正体不明だった時期に用いられた犯人像(名探偵コナンでいうところの黒ずくめ姿)からとっています。
服装や髪型は正体判明時の姿を参考。
つまり、ドット絵は2種類をミックスしたビジュアルになっています。
顔が隠れているとはいえ犯人の推測が可能なので、ネタバレを避けたい方は気付きを得ない程度にドット絵を眺めましょう。
ヒステリア犬
ヒステリアは爆破現場に金属製の犯行カードを残していきます。
カードに描かれているマスコット的なキャラクターがこの犬です。
ヨークシャー・テリアを模しているとのこと。
そもそもヒステリアの「テリア」は犬種を示しているわけですね。
色はかわいくピンクにしてみました。
クイーンメアリーズホテル
右側に配置したビルはクイーンメアリーズホテルという、ヒステリアが最後にターゲットにした建物です。
オフィスやショッピングモールなどを内包した70階建ての巨大施設。
ヒステリアはここでの犯行に失敗して逮捕されました。
ドット絵の制限下で階層の再現はできていないので「70階ないじゃん」というツッコミはなしでお願いします。
こだわりポイント
ヒステリア周りには基本的に爆発物を配置していますが、狙って置いた他のアイテムがあります。
1つはベビーベッド。
犯人を示唆するもので、実際これだけでヒステリアの正体を看破できます。
もう1つは右側のゆるキャラみたいなの。
魔人探偵脳噛ネウロもとい松井優征さんの作品は、概念や思想といった形のないものを独特の表現で具現化しているのが特徴です。
ヒステリアが携帯電話爆弾を用いるシーンがあるのですが、携帯電話に潜ませた「殺意」を表現した姿がこのキャラクターでした。
手足にヒレが付いていたので両生類っぽく緑色に。
ドット絵制作の大まかな流れ(2022年版)を確認
年初なので、私がドット絵を制作するときの大まかな流れをまとめておこうと思います。
2022年までの制作を通して確立したスタイルの紹介といいましょうか。
基本的には
- ラフ
- 描き込み
- アニメーション追加
- 最終チェック
の順番で作業しています。
来年はどこかバージョンアップしているかもしれません。
振り返りに使えるのも記録を付ける楽しみですよね。
ラフ制作
最近になって最も重要な作業だと捉えているのがラフです。
実は私はおろそかにしがちだったのですが、そうすると後工程になってから「考えながら描く」ことになり進捗がガタ落ちする傾向にあります。
何を描くか決める
ラフを描く前に題材を決めます。
(コンセプトはすでに決めているものとします)
ヒステリアは当然描くとして
ターゲットの建物(今回は高層ビル)
マスコットの犬
爆弾
ヒステリアにまつわるアイテムをたくさん
を盛り込みたいと考えました。
もう少し具体的にしないと描けないので
ターゲットの建物 → ヒステリアが最後に爆破しようとしたホテル
ヒステリアにまつわるアイテム → 正体を示すベビーベッド
のように、重要なところだけ明確にしておきました。
アニメーション個所を決める
ラフ制作と並行することが多いのですが、どのドット絵をどう動かすのかを決めておきます。
アニメーション量によって完成までの時間が大きく変わってくるので。
動きをつけるのに時間がかかりそうならドット絵のデフォルメ率を上げる、重要どころ以外のオブジェクトを減らすなど、描き込み作業での調整を視野に入れます。
ヒステリアのドット絵では本人に対象を絞り
- 「ヒステリア」には犬のような興奮した呼吸
- 「ヒステリア犬のダイナマイト」には線香花火のような火花
のアニメーションをつけることにしました。
ラフを描く
題材の配置を決めながらラフを描きます。
配色もある程度確定させたいので肌や髪、服など、画面に対する割合が大きめのパーツは色分けするようにしています。
完成直前になって色がパッとしないと感じるケースが多く、ラフ段階から意識するようになりました。
ヒステリアでは以下のラフを作成。
完成したドット絵とほぼ同じ構図だと分かるでしょうか。
アニメーション対象が画面内にバランスよく配置されているかもチェック。
一部に密集しているとアンバランスな印象を与えかねません。
描き込み
ラフに納得できたら描き込みを開始します。
アニメーションは考えず、まずは一枚の静止画として完成を目指します。
個々の描き込み
画面内に配置した各題材を描き込んでいきます。
私は主役級から仕上げていくようにしています。
今回のドット絵でいうと
ヒステリア → ヒステリア犬 → ビル → ……
という順番ですね。
メイン題材の方が目立つように配置されるはずなので、ドット絵全体の雰囲気を早めにチェックできます。
主役よりも脇役の方が変更しやすいことから、違和感を感じた時に他題材で調整できるメリットもあります。
ラフに置換
アニメーションを追加する予定のドット絵は特に、画像を分けて制作することがほとんどです。
題材の描き込みが完了するたびにラフの上に配置し、様子を確認していきます。
下はヒステリアを配置した画像。
パース、題材同士の重なり、サイズ感に不備がないかを主にチェックしています。
不足要素の洗い出し
一通り完成したら物足りない箇所を洗い出します。
例えば背景色は白を予定していましたが、余白が残った未完成品に見えてしまうのではないかと心配になりました。
うっすらピンク色に変更することで塗り忘れでないとひと目で分かるように。
犬の色と合わせて「テーマカラーがピンクのドット絵」に舵を切ります。
最終的にフォント周りを修正・位置調整しつつ、他題材と被らないように画像サイズを縦に拡大して完成版。
アニメーション制作
静止画が完成したら、個々のドット絵にフォーカスを移してアニメーションを追加していきます。
ヒステリア本体を例に挙げると、動きのある上半身だけを別画像に分けました。
パーツが分割されている場合すべて組み合わせた上で動作チェックしてもよいですが、手間がかかるので暫定的にパーツを追加しながら単体で確認することもよくあります。
下半身を仮置きしてヒストリア単体の動きを確認した状態が以下。
最終的には別パーツになっている下半身の上に上半身を重ねて同様のアニメーションを実現します。
最終チェック
各題材のアニメーションが完成し結合が終わったら最終チェックを行います。
ここではレイヤ表示設定やデザイン反映漏れのチェック、色調整が主な作業です。
別画像同士を組み合わせてまとめている都合上、整合性が取れていない個所が見つかることもあります。
影ができているべき場所にない、というのが典型例ですね。
誤りを検出するための工程と位置付けているのでなるべく日を改め、新しい気持ちで臨むようにしています。
今回の題材は人気漫画とはいえ、あまり注目されていなさそうかつ好きなキャラクターだったので描いていて燃えました。
まさに「お前らこれ知っているか!?」です。
結果がどうなるかはさておき、SNSのような反応が分かる媒体に公開するのが楽しみなんですよね。
それでは今回はここまで。
次の記事でお会いしましょう。