マジック:ザ・ギャザリング(以降、MTGと省略)のドット絵を描くにあたって、カード枠が実は悩みの種です。
表面のデザインは大きく旧枠、新枠、新々枠(ホログラム入り)に分類できていたのですが、近年はMasterpiece Seriesやショーケース・フレームなど種類が増加。
異なる年代のカードをドット絵にするたびに枠を描きおろさなければなりません。
イラストを描くだけでも大変なのに枠まで最初から制作となればなかなかの重労働。
私が直近のセットに手を伸ばせない原因になっています。
そんなMTGにおいてデザインが変わっていないものが一つ。
カードの裏面です。
今回は作品の軸をずらし、カードの裏面をドット絵にしてみました。
不変のデザインをドット絵でお楽しみください!
『MTG(マジック:ザ・ギャザリング)』からテーロスの神々入り「カード裏面」のドット絵
タイトル:『テーロス五神』
制作時間:28.6時間
息の長いトレーディングカードゲームほど、時代のニーズに応じてデザイン変更も多くなるもの。
MTGでプレミアム・カード(箔押しカード)が導入されたときには、人気を集め始めていた遊戯王OCGを意識したと感じざるを得ませんでした。
それでもMTGの変化はとても緩やかなものだったと記憶しています。
特殊デザインのカードを連発するようになったのはここ最近のこと。
カード枠の制限が緩和されたからという話も聞きました。
もはや特別フレームのカードがセットごとに標準搭載。
あるカードを描きたいと思ったら、大抵の場合はカード枠から描き直さないといけません。
さて、カードの表面がそんな状況なのに対し、裏面は初版から一切変わっていません。
後発のポケモンカードはデザインが変わっていますから、30年近く続いているゲームでこれはすごい。
5色のマナをあしらった裏面は、MTGの概念を端的に表現している不朽のデザインといえるでしょう。
どんな表面にも対応する共通パーツとして、ドット絵にする意義も大きいですね。
ドット絵『テーロス五神』について
『テーロス』はギリシャ神話をモチーフとした次元で神々が支配しています。
白、青、黒、赤、緑の単色で表される5柱は大神と呼ばれ、特に強大な模様。
カード裏面の5色のマナをそれぞれの神に紐づけたのが本ドット絵です。
MTGには、1つのコンセプトに基づいて設計したカードを同セット内の各色に配置する「サイクル」という概念があります。
テーロスの単色神はあくまでサイクルの一例。
色マナと結び付けるなら単色サイクルであればなんでもよく、受け幅が広いコンセプトです。
カード裏面デザインのザラザラ感が星くずっぽく、夜空を映しながら出現する神々と相性が良さそうに感じたのと、『テーロス還魂記』がもうすぐスタンダード落ちする追悼の念からテーロスの神を題材に選びました。
テーロスの神々
ドット絵に出現する神を紹介します。
『テーロス還魂記』で収録されたショーケース・フレームカードは星座を模した素晴らしいデザインでした。
ドット絵もそれに倣ったデザインにしています。
ヘリオッド
ヘリオッドは白マナにまつわる神。
テーロスのストーリーで一番存在感がある神です。
『テーロス還魂記』で収録された「太陽冠のヘリオッド」は即死コンボのパーツになることを除いても強く、MTGアリーナで使用している方も多いのではないでしょうか。
人気プレインズウォーカー「エルズペス」を不当に殺害したのが原因で、一部ファンからヘリ〇スと呼ばれています。
タッサ
タッサは青マナにまつわる神。
『テーロス』『テーロス還魂記』どちらの環境においても活躍した、最も採用された神だと思います。
かくいう私もMTGアリーナで使用しており愛着があります。
出したターンに仕事するのが偉い。
エレボス
エレボスは黒マナにまつわる神。
エルズペスが死後に送られた「死の国」を統べる存在だったりストーリーでの重要度が高めです。
しかしカード性能は不遇で、採用されている姿をほぼ見たことがありません。
『テーロス還魂記』でヘリオッドを封印したようなので信者が増えたことでしょう。
パーフォロス
パーフォロスは赤マナにまつわる神。
『テーロス』時代の「鍛冶の神、パーフォロス」は有用だったらしいですが、『テーロス還魂記』のパーフォロスはほとんど使われていませんでした。
コストが重めで能力も即効性がないので、環境と噛み合わなかったのかもしれません。
ナイレア
ナイレアは緑マナにまつわる神。
緑にはありがたいアドバンテージ能力持ちですし破壊不能クリーチャーとして顕現するのでそこそこと思いきや、現スタンダードでは全く使われていません。
緑クリーチャーの質が高くなりすぎて、ナイレアを入れるスペースがないのでしょう。
4マナ域は層が厚すぎる……。
こだわりポイント
神々の背景は属性に由来した色の夜空になっています。
光る星の中に「友好色」が混ざっているのに気が付いた方はいらっしゃるでしょうか。
例えば白の神ヘリオッドなら、友好色は青と緑。
矢印で示した星が青色・緑色に光っています。
宇宙を描く場合、色相が異なる星を混ぜるといい感じになります。
今回はMTGの概念「友好色」を星の色に取り入れてみました。
見えない部分をどこまで描き込む?
ドット絵を描いているとディティールを描き込むべきか迷うことがあります。
ドット絵『テーロス五神』の神々はシルエットのみ登場。
形状が分かればよく、内側まで描き込まなくてもよいケースです。
効率化を見込めるうれしい状況。
にもかかわらず、私にとっては手放しで喜べないパターンだったりします。
神々の描き込み
ドット絵『テーロス五神』では、神々をある程度まで描き込んでからシルエット化しています。
ディティールこそ甘いものの、ドット整理まで終わった線画状態まで描き込みました。
パーツを判別できるレベルにしたのがポイントです。
描き込み省略は破綻のリスクあり
私は、絵が破綻するリスクを減らすために内側の作画もなるべく行うようにしています。
良さそうなシルエットでも内側に線を引いてみたら不整合が発生した……
なんてのはよくあることですからね。
シルエットだけで作業を進められる人はある程度の画力を持っている人だと思います。
対象の輪郭を正確にとらえて出力できるくらいに、描くことに慣れた人です。
私はそうではありません。
現物からかけ離れたシルエットにならないよう、隠れる部分でも少しは描き込むようにしています。
目印の観点からも描き込みたい
シルエットの内側を描き込みたい理由がもう一つありました。
テーロスの神々はシルエットの上に星座を重ねた構造。
星の位置が首元、肩、手など決まっているので、ディティールを描き込んでおくと正確に星座を配置できます。
「神がこういう格好をしているから星座をこう配置しました」と根拠を説明できるようになるため、シルエット内を描き込んでおいた方がいいかなあと思っています。
コストと品質のバランスを取る
結局のところ「コストと品質のバランスを取ろう」ということです。
シルエットの中身を描くのは確かに面倒。
しかし最終的に見えなくなるからこそ、凝る必要がなくなります。
デッサンの狂いが閲覧者にばれません。
細部に関して指摘を受けることがないのです。
明らかに不自然でない程度に体のバランスを取り、各パーツがつながるように作画する。
そのひと手間で作品の品質が向上するなら、十分なリターンではありませんか。
今回は毛色が少し違うタイプのMTGドット絵を制作しました。
以前も別アプローチのドット絵を描いていたので久しぶりです。
たまには特定カードのドット絵から離れるのもいいなあと思ったり。
ワンパターンにならないように工夫していきたいですね。
最後はいつも通り原寸のドット絵でお別れ。
次の記事でお会いしましょう。
それでは。