皆さんは連載を追う漫画をどのような基準で決めていますか?
序盤で興味を引かれたかも重要ですが、私はその作品の方向性を予想して判断しています。
最初こそ目新しさから面白いと思ってもワンパターンな展開が続いたり、ありきたりな能力バトルものに路線変更される可能性があるからです。
私が藤田和日郎(ふじた かずひろ)さんの漫画を手に取ったのは『からくりサーカス』が初でした。
人形を使って戦う漫画というのが第1話の時点で分かり、コンセプトと造形に魅了されたことを覚えています。
そして「藤田和日郎さんの漫画」を追いかけるまでにした要因が、実は『からくりサーカス』の最序盤にありました。
決め手となったシーンに登場したキャラクターが「ローリングアームズ」です。
今回はそんな思い出深いキャラクターをドット絵にしたので、ぜひ見ていってください。
本記事には完結済み漫画のネタバレを含みます。
フォーカスするキャラクターの立ち位置的にほぼ問題ないと思いますが、未読の方はご注意ください。
『からくりサーカス』から、私をファンに引き込んだ立役者「ローリングアームズ(と中田)」のドット絵
タイトル:『ローリングアームズ』
制作時間:12.3時間
「ローリングアームズ」は漫画『からくりサーカス』に登場する「懸糸傀儡(けんしくぐつ)」です。
懸糸傀儡とは劇中の「人形使い」が操る戦闘用の人形を指します。
ローリングアームズの操作者はぶっ殺し組の中田。
手練れの人形使いとのことですがローリングアームズはあっさり大破、中田も直後に死にました。
そう、完全にモブかませ犬です。
しかしこのコンビの死にっぷり、私を藤田和日郎さん漫画のファンにした要因でもあるのです。
からくりサーカスは第1巻の時点で不気味な人形が登場。
この時点では「人形を使った特殊なバトルものか?」という印象でした。
第2巻になると中田を含む多くの人形使いが登場、威勢よく敵陣に突っ込んでいった中田はトラップに巻き込まれてさっそく派手に死亡しました。
このシーンを見て、ひどい死に方もきっちり描く作者なんだと確信。
漫画の中には殺すつもりのモブキャラが明らかに雑に描かれていたり、人気キャラを絶対に死なせないのが透けて見える作品が多くあります。
演出のためにあえて犠牲者を設定するのは当然ありですが、作品の持つ雰囲気を薄っぺらくしては本末転倒だと私は思うわけです。
曲がりなりにも希少人材である人形使いをあっさり退場させるのを見て、この漫画家さんはそういったごまかしをしなさそうだと子供心に感じました。
能力が高くても攻撃を受ければ人は死ぬ。
からくりサーカスは実際に期待を裏切らず、誰が生き残れるのか分からないハラハラ感が常にありました。
ファティマ~!ジョージ~!!
この空気感は後に登場する自動人形の凶悪さを一層引き立てていると思います。
ドット絵『ローリングアームズ』の説明
ドット絵ではローリングアームズおよび操作者の中田を描きました。
中田が仕事についての連絡を取っているシーンをイメージしています。
中田は「ぶっ殺し組」という人形を使った暗殺集団に属しているので依頼内容は殺しでしょう。
ローリングアームズ
「ローリングアームズ」は中田が使う懸糸傀儡。
西洋鎧風の上半身にスパイク付き球体タイヤの下半身、三節棍に似た構造の長い腕を持ちます。
障害物をパンチで破壊していたので火器の類いは搭載していない模様。
からくり門のトラップにかかりローラーに巻き込まれて破壊されました。
登場シーンはわずか13コマ。
ぶっ殺し組の他人形と比べれば断トツでトップ層です。
中田
「中田」はローリングアームズを操作する人形使い。
見た目はガラの悪そうな兄ちゃんという印象でしょうか。
ドット絵では後ろ姿のみ。
携帯電話で通話中です。
人形使いは操り糸付きの手袋で人形とつながっているので、破壊されるローリングアームズごと引っ張られる形でローラーに巻き込まれ死亡しました。
登場シーンは16コマ。
改めて言いますが、モブでも私にとって(死にざまが)印象深いキャラクターです。
こだわりポイント
劇中では良いところなくあっという間に死亡した中田。
せめてドット絵ではプロフェッショナル感漂う仕事シーンを描くことにしました。
背景は夕日。
闇に乗じて行動するつもりなのか日が沈む前に仕事を終わらせたのか。
どちらにもとれるようになっています。
動きは大げさにすべきか?
ドット絵を描いていて意外と困るのが「わずかな動き」です。
現実通りに動かしているはずなのに見栄えが良くないことがたまにあります。
正しく描くことと格好良く見えることは別問題だと、今回のドット絵で改めて感じた次第です。
中田のモーションを使って説明していきます。
中田のうなずきモーション
ドット絵『ローリングアームズ』にアニメーションはほとんどありません。
中田がたまにうなずくのが最も大きい動きという、静止画に近い作品になっています。
ごくわずかな動きなのに、これが案外手こずりました。
首だけ動かす違和感
実際に自分で通話ポーズをとって試すと、相槌で動かすのは首だけで十分だと分かりました。
そこでドット絵の首だけを動かしてみます。
なんだかイマイチに思いませんか?
体が全く動かない不自然さが目立つといいますか……。
ドット絵を描いている身からすると、首から下を動かさない「手抜き」に似た感覚にも襲われます。
例えば会話中なのですから携帯電話は耳元から離さずにいるべきですが、腕を動かしていないのでずれが発生していますね。
それらしく見せるには多少大げさにしてでも他部位を動かすべきなのではと思いました。
胴体が動き過ぎる違和感
上半身をちょっとだけ動かしたらどうでしょう。
さっきより良くなった気がしますが、今度は別の違和感が。
電話で胴体がこんなに動くか?
そもそも首だけ動かせばいいはずと分かっているモーション。
上半身まで動くと電話先の相手にペコペコ頭を下げているようにも見えます。
私の脳内の中田はそんな性格ではありません。
これは胴体の動きが大き過ぎだと判断しました。
影色を修正して胴体だけはわずかに動かす
胴体をパーツごと動かすと「動かし過ぎ」になります。
そこで胴体の線画はそのまま、塗りだけを修正してわずかな動きを表現しました。
俗に言う「0.5ドット」にも通じるよく使うテクニックです。
下画像をご覧ください。
パーツのシルエットは全く変わっていませんが、背中の影色部分が動いています。
これにより胴体の微妙な動きを表現できます。
他パーツを追加してアニメーション速度を調整すると
頭と腕の動きに対応して胴体もわずかに動くアニメーションが完成。
現実的に分析すると首以外も動かすオーバーアクションになったものの、ドット絵としては見栄えが向上したと思います。
したよね?
色々なタイプのドット絵を描く中で、激しく運動するドット絵よりもじわりと動くドット絵の方が難しいと感じることがよくあります。
(逆パターンももちろんあります。)
どんなドット絵にもそれぞれ異なる難しさがあるので、おそらくは色々と手を出していることで特化した技術の定着に至っておらず、何をやっても難しさを感じる状態になっているんじゃないかと思います。
特定の版権・手法・アニメーションに絞った短期集中型の練習も取り入れた方がいいのかもしれませんね。
今週はここまで。
次回の記事でお会いしましょう。
それでは!