夏のホラー企画、第3弾。
昨年も取り上げたテレビドラマ『学校の怪談』から、エピソードをまたひとつドット絵にしてみました。
学校の怪談シリーズはオムニバス形式のホラードラマ。
ホラー耐性が低かった時期に視聴したことが災いし、怖い作品群としていまだ私の記憶に残っています。
かつて番組を楽しんだ身としてドット絵を公開できるのはうれしいですね。
大人になって調べてみると、怖かったエピソードはやはり「トラウマになった話」として認識されているようです。
古い作品で知らない人も増えていると思いますので、ぜひ見ていってください。
あの頃の恐怖を共有しましょう。
ドット絵および記事にはドラマのオチに関する致命的なネタバレが含まれます。
ここまでで興味を持った方がいましたら、先にドラマの視聴をお勧めいたします。
短編ゆえに時間もかかりません。
かなりの良作なので損はさせませんよ!
ホラーテレビドラマ『学校の怪談』から最恐エピソードの1つ「恐怖心理学入門」のドット絵
タイトル:『恐怖心理学入門』
制作時間:11.8時間
「恐怖心理学入門」は『学校の怪談 呪いスペシャル』に収録された短編ホラー。
シリーズ中で最恐エピソードと名高い作品のひとつで、実際に私もトラウマを植え付けられました。
幽霊の存在が段々と鮮明になっていくのが不気味で、Jホラーの良さをこれでもかと味わえます。
あらすじは以下の通り。
主人公・佐藤は大学の講義にて、教授から依頼を受けて集団心理の実験に参加することに。
内容は「他の学生が幽霊を信じるように仕向ける」というもの。
写真やうわさ話で友人たちを誘導しているうちに自身も幽霊の存在を感じ始め……。
ドット絵『恐怖心理学入門』の説明
ラストシーンをドット絵化しました。
気の抜けた主人公が幽霊に後ろから抱きつかれ、部屋に引き込まれます。
色々あってからこの展開なので衝撃です。
おそらく作中で最も有名なシーン。
他にもコピー機で写真を拡大するシーン、口を開けた女のシーンなど、ドラマは見どころ満載です。
幽霊のだいしゅきホールド
幽霊が抱きつくシーンがだいしゅきホールドに見えるとネタにされている模様。
まあ、確かに同じですね(汗)。
劇中のうわさ話が真実だとすれば痴情のもつれで死んだ幽霊なので、だいしゅきホールドも言うほど変じゃない……はず。
ただ、笑い飛ばせるほどホラー慣れした状態でこの作品に出会えた人はうらやましい。
本当に怖いんですよ、これ。。
こだわりポイント
ドット絵栄えするように電信柱の配置を変更しています。
私は基本的に原作再現を心掛けているので、こういう考え方は新しい試み。
詳細は後半記事に記載します。
原作ドラマと異なる作画について
ドット絵を描くときは資料を用意し、なるべく実物に近づけています。
今回でいえばドラマ映像が重要なインプットでした。
しかし写実的な作品を作りたいわけではないので、現実ではちょっとあり得ない要素も「だまし」「フィクション」として採用することがあります。
3次元では不可能なレイアウトや、死んだパースがその代表ですね。
ドット絵『恐怖心理学入門』においては参考映像の画質が悪かったため、アパートの全体像が分かりませんでした。
そこで選択したのが「資料で確認した要点をおさえながらオリジナルアパートおよび周辺風景を作画する」手法です。
(オリジナル創作をする方は当たり前にやっていることだと思いますが)
原作再現のアパートをドット絵に落とし込めなくても、きちんとアパートに見える建物を作画できれば問題ないだろうという考え方です。
ドラマと異なる風景になったことの釈明というわけではないですが、意識していた部分について述べていこうと思います。
アパートのデザイン
参考にした映像が粗かったので、アパートのディティールをほとんどつかめなかったのは大きな課題でした。
ドラマに登場するいくつかのシーンを見て
- 主人公の部屋の位置
- 窓周りの構造
- 壁の構造
を判別できたくらい。
そこで現実の古アパートの写真を参照しながら建物をらしく見せる要素を抽出し、結果を反映してそれっぽいアパートを作画することに。
- 雨どい
- 2階の足場
を追加すれば家らしさ、アパートらしさを担保できると判断しました。
建物がアパートだと認識させるために追加した部分です。
ちゃんと一役買っていると思いませんか?
電柱の位置
ドラマでは主人公の部屋から見える位置に電信柱(もしくは電柱)があることを確認できます。
窓を正面に捉えた構図だと本来は画面内に収まらない位置だと判断できましたが、ドット絵ではあえて建物の手前に配置しました。
理由は「電信柱なしだと描き込み量が寂しくなるから」。
本ドット絵が全体的に平面で構成されているからか、オブジェクトが少なすぎるとなんだか貧相になるのです。
試しに電柱を消してみましょう。
何だか殺風景じゃないでしょうか?
また、アパート周りの風景を想像させる役割も期待しました。
視界内にアパートしかないと、ロケーションが田んぼの真ん中だと解釈されても不思議じゃないですからね。
電話線の配置
電話線(あるいは電線)を見て「ケーブルが垂れ下がるような接続っておかしくない?」と思った方がいるかもしれません。
私もそう思います。
参考画像の中にはこういうだらしない感じの配線があるにはあったのですが、建築的に適切なのか怪しいところ。
そんな疑わしい線を採用した理由を明かしますと、ずばり「閲覧者の注目を集めるため」です。
これまでの経験から、序盤の動きが少なすぎる作品だと見た人が退屈に感じるのではという結論に達しました。
ドット絵『恐怖心理学入門』では、幽霊が出現するまで目立つアニメーションがありません。
とはいえ「平穏な時間」は重要で、削るわけにはいかず。
そこで序盤はユラユラ動く電話線を眺めてもらうことで幽霊まで時間をつなぐ構成にしました。
他に動かせそうなオブジェクトがありませんし、地味に重要ポジションだと考えています。
次のアニメーション位置(窓)も視界に入るので閲覧者の視線が散らないのもグッドポイントでした。
『恐怖心理学入門』の映像なり画像なりを表示しながら作業するのは呪われそうで精神的にきつかったです。
過去のトラウマ案件だったとしても資料を見ないわけにはいきませんからね……。
ホラー企画では必ずしも恐ろしいドット絵を描いているわけではありませんが、怖いものを見たくない気持ちがあるのかも?
それでは今回はここまで。
次の記事でお会いしましょう。