夏のホラー企画、第2弾。
オムニバスホラー漫画『僕が死ぬだけの百物語』のドット絵を描きました。
近頃は体力が衰えたせいか、漫画といえども長編を手に取る気力がなくなってきています。
かわって一話完結タイプの価値が急上昇。
色々なエピソードを読めるのがまたいいんですよね。
『僕が死ぬだけの百物語』は最近注目している作品であり、あらゆる角度から怖がらせてくれるのでおすすめです。
ドット絵が印象に残ったなら、原作漫画をぜひ読んでみてください。
『僕が死ぬだけの百物語』から、エピソード「暗い村」に登場する「おさすりさん」のドット絵
タイトル:『おさすりさん』
制作時間:17.3時間
『僕が死ぬだけの百物語』はオムニバス形式のホラー漫画です。
サンデーうぇぶりにてWEB連載されています。
作者は的野アンジさん。
人間、幽霊、生物、悪魔など要因はエピソードごと異なりますが救いのない展開がほとんどであり、ホラー度は高め。
すれ違い、あるいは裏目を引いて被害が出るパターンも多く、やるせなさが恐怖をさらにあおります。
たまに感動系があるものの大体は悲惨なので、耐性のない方は慎重に読み進めましょう。
ドット絵の「おさすりさん」はエピソード「暗い村」に登場する物の怪。
おさすりさんの通り道に位置する集落の住民ほとんどは、夏になるとどこかに避難して過ごすようです。
何も知らない主人公がそんな地域に訪れたところからお話がスタート。
おさすりさん自体の怖さもさることながら思わぬところから心を抉ってくる秀逸なエピソードなので、ぜひ読んでくださいな。
……と言いたかったのですが、ドット絵の完成が遅かったせいで漫画のWEB掲載期間が終了してしまいました。
コミックス収録までお待ちください。。
ドット絵『おさすりさん』の説明
漫画内のワンシーンをドット絵にしました。
部屋に侵入を試みるおさすりさんが窓を激しくたたく場面でしたが、ドット絵では張り付くところまで。
短編ホラーにおいては怪物が正体を現すシーンがクライマックスになりがちなのですが、おさすりさんのエピソードに関してはその後の展開が見どころではないでしょうか。
そのためネタバレを恐れず本体を描かせていただきました。
おさすりさん
おさすりさんの正体は人間の目そっくりな模様が入った羽を持つ巨大なガです。
群れで移動しわずかな明かりにも反応、そして肉食。
生息地域の周辺住民はこれらの習性を理解してうまくやり過ごしているようです。
こだわりポイント
白黒漫画が題材のドット絵を描く場合はカラーリングが障害になっていました。
原作者さんのイメージとかけ離れた色を使ってしまうのはできるだけ避けたいところ。
その中で、今回は根拠を持っておさすりさんの色を決めています。
窓に張り付くおさすりさんの羽を人の顔と見間違える描写が作中にあったので、人肌に近い色合いだろうとベージュ系統で塗りました。
「どうしてそんな色にしたの?」と聞かれても説明できるような選択を、これからも心掛けていきたいですね。
同色パーツの重なりをどう処理するか
カラフルな題材には頭を抱えますが、単色過ぎるのも困ります。
同色のパーツが重なると境界を判別しにくくなるからです。
サイズにもよりますがほぼ単色のキャラクターは描きにくいこと、この上ありません。
これという解決方法がいまだに定まっていないので有益さに欠けると思いつつも、おさすりさんを例にして同色パーツの重なりについて書き残しておきます。
自分の選択を最後に載せておきますので、ひとつの案としてぜひご参照ください。
同じ色の重なりで発生する問題
おさすりさんのような野生生物は服飾の類いを身につけていませんから、カラーリングは当然、地肌の色そのものになります。
場所によって多少の体色差はあれど、基本的にはどの部位も同色で塗られるべきでしょう。
おさすりさんをパーツ分けするならば脚・胴体・羽の3つになります。
※脚の描き込みを説明用に簡略化しました。
ここからは脚に注目を。
3パーツを重ねると羽の模様が分断され、ドットが乱れたかのようになってしまいました。
さらに、羽と重なった箇所は脚を視認しにくいですよね。
脚を暗色に変更しても同様。
胴体部分は見えやすくなったものの、羽部分では下側の線と混ざり合ってしまいます。
この問題は脚と他パーツが同系色だから発生します。
本来であれば、こうして重なるパーツ同士は全く異なる色であることが望ましいのです。
パンダのような動物はある意味で描きやすい題材といえるでしょう。
重なりへの対策
パンダのような「脚と胴体が違う色」の生物が都合よく題材になるとは限りませんよね。
パーツ同士の境界を色で区別できないなら、輪郭線を使うくらいしか対策が思い浮かびません。
ドット絵においては縁を取る、となるでしょうか。
しかし縁取りには問題が。
まず、今回対象となる脚は細いパーツ。
縁取りを加えると太さが変わってしまいます。
縁取り前の脚とは印象が違ってくるでしょう。
肉厚になった気がします。
胴体との対比でみても、これでいいのかモヤモヤしますね。
さらに他パーツと重ねた状態を見ると、脚だけ悪目立ちして浮いていませんか?
アイテムや破壊可能なオブジェクトを区別できるように主線で囲う手法がゲームで使われますが、そういった効果が働いている感じ。
はっきりし過ぎているなあという印象でした。
見えないくらいでちょうどいいという開き直り
最終的には、脚を縁取るのではなく片側にのみ主線を追加する方法に落ち着きました。
脚の細さを担保しながら輪郭をとらえやすくした折衝案です。
さて、こうして完成した脚を他パーツに重ねてみましょう。
言うほど改善されていない、と思いました?
これで良しとした理由は2つあります。
先入観による補完に期待
おさすりさんは巨大なガです。
おそらくガを知らない・見たことがない方はほとんどいないでしょうから、「ガには脚がある」という先入観は誰もが持っているはず。
ということはパッと見でこれはガだと判別できるなら、脚がはっきりしていなくても「ここに脚がある」と何となく認識してもらえる期待値が高いのではないでしょうか。
誰もが知っているモチーフならば不明瞭な個所を脳内で補完してもらえるのでは?と考えました。
細いものはそもそも見えにくい
細い物体はそもそも視認性が低いことも理由のひとつです。
暗闇なのにガの脚がはっきり見える方がむしろ不自然。
見えにくい方がかえって脚の細さを表現できているのではないかと考えました。
同系色のパーツが重なってどう作画しよう、と困るケースは頻繁に発生します。
今回は
- ガというよく知られた生物がモチーフだった
- 視認性が低い暗闇中のドット絵だった
という2点を利用して解決。
これからもずっと付き合っていかなければならない問題なので、題材ごと適切に対処していきたいですね。
皆さんが使っている秘伝の手法があったらぜひ教えていただきたいです。
最後は等倍のドット絵でお別れ。
次の記事でお会いしましょう。