「となりのヤングジャンプ」で連載中の『まもりママはお喚びじゃないの!?』に登場するキャラクター「バンビット・ゾンヴィ」を描きました。
ケモノ耳と尻尾、軽い性格、ギザギザ歯、パンクな衣装と、好きな人はとことん好きそうなキャラクターデザインです。
私はツボにはまり、初登場時点で描くと決めたほどです。
記事後半ではドット絵化が難しいキャラクターデザインについて触れました。
具体的には各パーツの色が同系色でまとめられているキャラクターです。
バンビットで言えばジャケットを着た上半身が該当します。
全パーツを色分けしたキャラクターデザインの方が珍しいので、よく直面する問題です。
ぜひ最後まで読んでいってください。
『まもりママはお喚びじゃないの!?』から「バンビット・ゾンヴィ」のドット絵
タイトル:『バンビット・ゾンヴィ』
制作時間:26.1時間
魔王軍最高幹部「原初の六魔人」の一人であるバンビット・ゾンヴィは作中屈指の強キャラです。
アンデッド属性を持ち致命傷を負ってもあっという間に再生、ちぎれた腕もつなぎ合わせてしまいます。
過度に狂暴・残虐ではないものの、相手を殺す発想にすぐ行きつく道徳観のなさも持ち合わせています。
不死身故に自他の区別なく命を軽く見ている印象で、性格の軽さもそこに由来しているのかなあと思ったり。
色々な面で個性が光る魅力的なキャラクターです。
各シーンでバンビットの身体的・精神的特徴を再現できるように、ストーリー性のあるアニメーションを目指しました。
腕に被弾 → 腕を再生 → 敵に突撃 → 後始末 の流れです。
何度も腕を飛ばされるバンビットに申し訳ないと思いつつ、きちんとループさせています。
ビジュアル説明
手を振るシーン
バンビットの飄々とした様子が表れる手の振り方にしたつもりです。
バンビットの砕けた性格なら上下関係・敵対関係を気にせず誰に対してもこういう行動を取りそうです(相手への見くびりを含む)。
他の六魔人もしくは魔王軍の雑兵になった視点でご覧ください。
腕を再生するシーン
ちぎれた腕を縫い糸でつなげる演出。
原作マンガの1シーンのオマージュです。
マンガではちぎれ飛んだ腕をキャッチしてつないでいましたが、ドット絵では腕を自立させてみました。
本来は服まで再生しないのですがアニメループの都合上、袖も復活します。
突撃するシーン
伸ばした爪での切り裂き攻撃を採用しました。
これもマンガからのオマージュです。
バンビットは強力なステルス能力と短時間の金縛り能力も持っています。
前者は派手さがなく、後者は画面外にいる敵がどうなったのか描写できないので見送りました。
ステルスはバンビットの能力の肝なので控えめに言って描きたかったです。
こだわりポイント
モノクロ作画
バンビットのドット絵を描くにあたり大きな課題がありました。
バンビットはモノクロのマンガ本編にしか登場しておらず色が分からなかったのです。
制作に着手しなかったのは「表紙とかでカラーイラスト出ないかな」と期待していたのもあります。
残念なことに色が分からないままバンビットは敗北し物語から退場。
色が分からなくてもやるしかねえ!と思い、「ドット絵もマンガと同じモノクロでいいじゃない」の精神で制作開始しました。
バンビットは鹿ベースなので茶髪だと踏んでいるんですが、どうなんですかねえ?
顔アイコン
バンビットは十字模様が入った独特の左目を持っています。
十字模様を描くには縦横3ドットずつ必要で、今回のサイズのドット絵では描き込むためのスペースがありません。
私が大好きなギザギザ歯も同様です。
この特徴をどうやって取り入れるか考えた結果、顔だけのアップを描き込む方法を思いつきました。
バンビットがコチラに気付くシーンに顔アイコンを入れ、顔の作りが分かるようにしました。
特徴が伝われば十分なので、デフォルメ度合いが高いアイコンでも効果的かなと思います。
同系色パーツ同士の重なりを描く
ドット絵で描くのが難しい題材というのはいくつか存在します。
そのうちの1つが同系色でまとめられた題材です。
具体例を挙げるなら
- 黒ずくめのキャラ
- 赤色、オレンジ色、紫色のみで構成されたキャラ
といった題材です。
ドット絵は色差で魅せるもの。
同系色同士だと色差をつけにくく、見栄えするドット絵を描くには技術が必要になるのです。
同系色は「重なり」が難しい
同系色は色のメリハリをつけにくい難しさがあります。
同系色の色が並ぶと境界が曖昧になりパーツを区別しにくくなります。
デザインの話ならば、同系色の中で色相を変えたり明暗差をつければいいだけ。
本当に厄介なのはパーツ同士が重なった場合です。
下の画像をご覧ください。
簡略化して描いたバンビット・ゾンヴィです。
ジャケットを着ている腕と胴体部分が黒色です。
このままならば各パーツがはっきり分かります。
では、ポーズを取らせてみましょう。
頬に手を当てているポーズなのですが、分かりましたか?
腕と胴体の黒色が重なり、パーツの判別が難しくなっています。
手と頬、上腕と前腕も同色なので合体してしまっていますね。
状態によってはポーズを判別できないことさえあります。
今回はジャケットの前が開いているのでまだ分かりやすいです。
腕パーツの色をかえて、どのようになっているか確かめてみましょう。
先ほどの画像よりはパーツを判別できると思います。
同系色が多い題材だと感じたら、こういった重なり問題を対処しなければならない可能性を念頭に置いて制作に臨むべきでしょう。
ファミコンのスーパーマリオにまつわる裏話をご存じでしょうか。
マリオはオーバーオールを着ていますよね。
腕と胴体の色を分ける目的があったそうです。
ドット絵で腕と胴体が重なったときに腕の動きがはっきり分かるように配慮されたデザインとのこと。
「ドット絵を考慮したキャラクターデザイン」は昔はよくあったようです。
同系色の重なりへの対処法
ここでは同系色のパーツで重なりが発生した場合に、パーツ同士の境界を表現する具体的な方法を説明します。
実際に私が使用している方法なので、一定の有効性は保証します。
主線を描く
主線を描いてパーツをはっきり区別するのが最も基本的な方法です。
主線を描かないタイプの画風でも、重なり合った部分には影色で線を描いて境界を表しています。
線画からドット絵を制作するのならほぼ確実にこの手法を選択することでしょう。
最大のデメリットは、低解像度のドット絵で使用できない点です。
解像度が低いと主線を描くスペースを確保できないことがほとんどです。
さらにひと回り小さいバンビットのドット絵を描いてみました。
左側のドット絵に、先ほどまでと同じ感覚で主線を入れた絵が右側です。
主線を描いたために腕が1ドット太くなってしまったのがわかりますか?
境界を表現するためとはいえパーツのサイズが変わってしまうのは許容できませんよね。
こういう時は他の方法を使いましょう。
ハイライトを入れる
黒色など濃い塗り色に対して非常におすすめの方法です。
物体の出っ張った部分で光が最も強く反射する理屈を活かし、ハイライトを入れてその場所に立体があると認識させるのです。
前腕の上部や側面にハイライトとして明るい黒色を入れています。
腕の位置がはっきりしたと思いませんか?
この方法なら主線を入れられないドット絵にも適用できます。
主線を描くと腕が太くなった画像です。
ハイライトなら腕の太さが変わりません。
奥行きで色差をつける
ドット絵には、奥にあるものを暗い色で塗るという定石があります。
重なり合うパーツの1つがもう一方より明らかに奥にあるのなら、奥のパーツを影色で塗りつぶして色差をつける方法を使えます。
前腕より上腕の方が奥にあるので、前腕を明るく、上腕を暗くしています。
この方法でもパーツのサイズ感を損なわずに境界を表現できます。
「奥にある」の判断基準には要注意です。
例えば両腕を胴体前でクロスさせている場合。
片腕を影色にすると大抵は不自然になります。
確かに片方の腕はもう一方よりも奥にあるでしょう。
しかしながら明暗の差が発生するほど距離に違いがないので妙な遠近感が生まれてしまいます。
重なり部分付近に影をつけるといった他の方法を探しましょう。
塗ってみて「あれ?」と思うのであれば他の人から見てもきっと変です。
直感的な見栄えを優先して修正した方がドット絵の仕上がりがよくなることが多いです。
ポーズや構図を変える
同系色のパーツが重なるようなポーズや構図を描かないのも一手です。
キャラクターの性格や設定を振り返り、描こうとしている全体像が妥当か再考しましょう。
また、題材の向きや角度を少し調整すると全体のシルエットが変わり、境界に頼らずとも各パーツをはっきり想像できることがあります。
塗りでなく形状から見直すのは非常に有効です。
見栄えを見ながら各手法を混ぜて使う
1つの手法だけで完結することはほぼありません。
ハイライトで使用した画像ですが、左手の付け根部分に影色を入れ、手と頬の境界を分かりやすくしていたことにお気づきでしょうか。
下の画像の赤枠内に置いたグレーのドットです。
手の色は十分に明るい色なので、ハイライトを入れても色差がなく効果を期待できません。
手と頬の境界に関してはハイライトの手法が使えなかったのです。
部位や色、見栄えに応じて最もよいと思った方法を選択しましょう。
上の画像はこれまで紹介した方法を組み合わせたドット絵です。
ドットの置き方に決まりはありません。
気に入ったパターンを見つけましょう。
ポーズが分かるので左の状態で十分だ、という最終判断も全然アリですよ。
今回は単純なドット絵で説明しました。
もっと大きなドット絵になると服のシワやアンチエイリアス、立体感をつけるための影色など他の要素が絡みますが考え方は変わりません。
境界を表現するために置くドットの存在を忘れないようにしましょう。
まとめ
ドット絵は境界を描けているかが重要です。
通常は色差で境界を表現します。
「同系色の重なり」は色差が少なくパーツを判別しにくくなる、ドット絵化が難しいパターンの1つです。
よって、
- 主線
- ハイライト
- 奥行き
を使って色差を発生させて境界を見いだしましょう。
ポーズや構図を考え直し、
- パーツが重ならないようにする
- 境界に頼らずシルエットでパーツを想像させる
のも有効な手段です。
「同系色の重なり」はドット絵を描いているとよく直面する壁です。
より良い手法を発見したらまた記事にします。
一緒に上達していきましょう。