今週はお休みと言ったな。あれは嘘だ。
はい、箸休め的なドット絵が完成したので更新しました。
今回は横山 光輝(よこやま みつてる)さん作の歴史漫画『三国志』のドット絵です。
日本で最も有名な三国志作品のひとつと言ってもいいでしょう。
かく言う私もこの漫画で三国志に初めて触れました。
好きな武将も影響を受けていたり。
ぜひ見ていってください。
横山光輝さんの漫画『三国志』から、病床に伏せる霊帝のせりふ「とてもつらい」
タイトル:『とてもつらい』
制作時間:14.6時間
『三国志』は横山光輝さんが描いた漫画作品です。
中国の歴史書である三国志を描いた漫画のおそらく先駆け。
ファンからは「横山三国志」と呼ばれ親しまれています。
三国志自体の説明は割愛させていただきますが蜀を中心に話が進み、蜀の滅亡をもって物語が完結。
世界的には魏国が一番人気と聞きますけど、蜀に主人公イメージがあるのは本作の人気あってのことではないでしょうか。
劉備は知人のところに転がり込んでは逃げるを繰り返す微妙さです。
そして初三国志だった私は、この漫画を読んで主要な武将や出来事を覚えました。
以後、私が三国志関連の作品を楽しむにあたっての土台になったことは間違いありません。
とてもつらい
当時の王朝・後漢の皇帝は「霊帝」です。
この時代は十常侍という宦官が政治の実権を握っており、霊帝は傀儡でした。
遊びに明け暮れた末に体調を崩し崩御。
三国志が始まるきっかけになった出来事のひとつです。
「とてもつらい」は横山三国志にて、病床に伏せている霊帝が十常侍に言った言葉。
顔を向けた先には見舞いに来た十常侍がいます。
現在はネットミームになっている1コマ。
月曜日が来る前などによく使われます。
汎用性が高すぎて文字だとネタが伝わりにくいのか、画像が貼られていることが多いです。
他版権を用いたパロディも多数。
ドット絵の説明
この作品は漫画の1コマをドット絵化したものです。
ネット上で使われるコマは「とてもつらい」発言シーンのみ。
ドット絵ではあおむけから身体を向き直すアニメーションを追加しました。
やつれた表情の表現
やつれ具合をほほの青色で表現しています。
漫画通りの線画表現はドット絵の解像度だと厳しめ。
ならばモノクロ漫画にない強みである「色」を生かすことにしました。
顔色を悪くしても良かったかもしれませんね。
王朝らしい華やかな配色
漫画風のドット絵は色味が欠ける傾向にあります。
皇帝の寝所なので華やかさを出したいところ。
そこで中国の時代もので見かけるカラーリングを意識し
- 掛け布団 → 赤
- 枠 → 緑+金
- 皇帝の衣 → 青
という派手めの配色にしました。
特に衣装の青にはこだわりがあります。
中国の皇帝は季節によって服の色を変えていたそう。
霊帝の崩御が4月頃ですから春に着たとされる青色の衣を採用しています。
まあ、病床までおしゃれをしていたかは不明ですが。。
竜の像
枠の装飾として金の竜像を採用。
ドラゴンとは違う、中国式のウネウネした竜もまたいいですよね。
竜は皇帝にとって権力の象徴だったそうです。
厳密には貴族や大衆にも人気があり、爪の数の違いで区別していたとか。
皇帝が使う竜は5本爪だそうですがこのサイズのドット絵ではさすがに再現できませんでした。
[制作記事]漫画のコマを元にしたドット絵を「作品らしく」するには
今回のドット絵には枠と竜を追加しています。
蛇足になりかねないリスクを承知しつつ踏み切ったのは漫画のコマをそのまま用いただけのドット絵は作品として寂しいため。
ところ天の助を制作したときからそう感じていました。
ここからはその点を深堀りしようと思います。
ドット絵のオリジナル要素を確認
まずはドット絵に追加した要素の確認を。
画面を囲うように緑色の枠を、左上・右下の2カ所には金の竜像を配置。
もしこれらを配置しなければ以下のようなドット絵になっていたでしょう。
現実にはこの状態が最も再現度が高いと言えます。
漫画のコマを抜き出したドット絵が作品らしく感じない理由は?
私は冒頭で「漫画のコマをそのまま用いただけのドット絵は作品として寂しい」と述べました。
以下の理由を挙げられます。
付加価値が低い
漫画のコマをドット絵にする場合は原作の画風を再現しなければなりませんので
- 漫画をトレースしてドット整理
- 模写
のどちらかの方法を取ることがほとんどです。
そうすると線画そのものに自分が生み出した価値はほとんどありません。
完成するドット絵はその線画に色を乗せただけのものになります。
色付けの技量で評価が変わるとはいえ実質塗り絵では、二次創作として物足りないですよね。
(塗り絵がコンセプトである場合を除く)
未完成に見える
漫画のコマをドット絵にした作品はなぜか未完成品に見えるというのがもうひとつの理由です。
原因はおそらく吹き出し部分。
吹き出しのカラーには白を用いますから遠目だと塗り残したキャンバスのように見えるのです。
しかも文字を入れる都合上、画面の少なくない範囲を占有。
今回は敷布団や枕にも白色を使うため、全体の割合で見ればなおさら余白が多いように感じるでしょう。
これらの事柄が積み重なり、漫画の1コマを抜き出したドット絵は総じて制作後の満足度が低い傾向があります。
死力を尽くしたという感覚が薄いのです。
オリジナル要素によって何を得られたのか?
枠と竜像がドット絵にもたらしたものは、ずばり描き込みと色味です。
まずは付加価値が低い点について。
ほぼトレースだったところに一からの描き込みが足されたのですから、制作者の「作った感」が増すのは納得していただけるかと思います。
漫画のデフォルメ調と比べると細かいドット絵になるので、画面内の情報量が増えて作品がリッチに見える効果も期待できます。
次に余白が多く見える点について。
枠や竜という着色パーツが増えたことにより画面に色を足すことができました。
モノトーン一辺倒だった吹き出し周辺にも色を配置できた格好(紫部分)。
塗り残し感は大きく軽減されたと思います。
私は必要に応じてトレースや模写を取り入れる派閥ですが「自分が作った」と胸を張れるかどうかは気にするタイプです。
漫画の1コマを抜き出したドット絵は性質上トレースが大部分を占めがちなので、作品と呼べるか否かの当落線上にいる印象。
ですから「今回はネタ画像を作っているんだ!」と割り切ることも。
そもそもこういうコンセプトは公式がやってくれそうですしね。
(とてもつらいのLINEスタンプはありました)
それでは今回はここまで。
次の記事でお会いしましょう。