今回の記事は過去に制作したドット絵の発掘回。
5回目にして最終回です。
こまごまとしたドット絵は他にもあるのですが、まとめるほどの量はありません。
新しく何か見つからない限り今回が最後になるでしょう。
公開するのはMUGEN用の格闘ゲームドット絵。
ドット絵を描き始めて4年くらい経過したときの作品でしょうか。
人間を描いたのは初めてだったかもしれません。
人の形をしているとはいえ、これまで描いてきたのは超人やAAでしたからね。
「形が多少崩れても大丈夫」という気の緩みがありました。
本作はそうではありません。
ぜひ、現在の作品と見比べていってください!
『MUGEN』用に制作した、カイザーナックルが誇る凶悪ボス「ジェネラル」風のゲニ子のドット絵
タイトル:『ジェネラルウィンド』
制作時期:2008年末~2009年前半
「ジェネラル」を知っていますか?
『カイザーナックル』という格闘ゲームの隠しボスです。
ゲーム自体はマイナータイトルに分類されるのではないでしょうか。
少なくとも私は、MUGENで知るまで聞いたことがありませんでした。
そんなゲームに登場するジェネラルは、格闘ゲーム史に残る凶悪ボスとして有名です。
性能が異常に高くCPUも超反応するため、確実に勝てるパターンが存在しないのだとか。
理不尽な強さに関してはこのサイトが分かりやすいです。
善戦の末に負けてあまりの悔しさに泣いたという文章を読み、申し訳ないのですが笑ってしまいました。
さて、『ジェネラルウィンド』はジェネラル要素を加えたゲニ子です。
いわゆるパロディキャラですね。
ゲニ子が分からない?
ゲニ子についても説明しましょう。
ゲニ子とは『THE KING OF FIGHTERS』に登場する「ゲーニッツ」を女性化したキャラクター。
『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』でミッドナイトブリスを食らったゲーニッツが変化した姿が元ネタです。
人気が高かったためかMUGENでは手描きドット絵で個別のキャラクターになっていました。
女版ゲーニッツなのでゲニ子呼びがメジャーですが、WINDという名前もよく使われています。
独立したキャラクター名として「ゲニ子」は不自然だからでしょう。
ジェネラルウィンドはこちらの名前が由来です。
ドット絵の話に戻りますと、『ジェネラルウィンド』はジェネラルと同じモーションで戦うゲニ子として描きました。
MUGENキャラを製作しようと格闘ゲーム向けに描いたドット絵です。
すぐに諦めたので完成しているモーションはとても少ないです。
まあ、懲りずに別キャラの制作に移りましたが……。
今回の公開にあたって背景を描き足し、ゲーム画面のキャラ周りをズームしたようなドット絵に加工しました。
モーション説明
『ジェネラルウィンド』のモーションは全て本家ジェネラルと同じです。
元キャラという見本があったからこそ、当時のドット絵スキルに対してうまく描けました。
ニュートラル(待機)
キー入力なし時の待機モーション。
表示機会が多いため、一番うまく描きたいドット絵です。
各動作につながるので真っ先に制作するケースがほとんどであり、終盤のドット絵と比べるとクオリティが低くなりがちなのが困った点。
制作を諦めていなければ、きっと最後に描き直していたでしょう。
しゃがみ
ニュートラルから移行するしゃがみモーション。
上半身を使い回していると思いきや描きおろしていました。
本家ジェネラルがそうだったのでしょうね。
上段くらい
上半身に攻撃を受けた時のダメージモーション。
MUGENでは小・中・大と設定でき、受けた攻撃の威力に応じてのけ反る度合いを変えるのが一般的でした。
これは上段くらい大、つまり最大のけ反り時のドット絵です。
背景
背景は『カイザーナックル』のジェネラル戦ステージです。
ここだけは今回描き足した部分なので現在のドット絵スキルで描いています。
本家ステージを見て描くだけなので、あっという間に完成しました。
こだわりポイント
ゲニ子の服飾デザインにもジェネラル要素を加えているのがポイントです。
皮手袋と革靴、腕の髑髏マークをジェネラルから取りました。
カラーリングも2キャラをミックスしており、金髪や衣服の緑色はジェネラルから、頭巾や手袋・靴の黒色はゲニ子から来ています。
実は練習に適しているパロディドット絵
『ジェネラルウィンド』のモーションは元キャラのジェネラル準拠。
トレースとはいかないながらも、元キャラを観察しながらドット絵を制作できました。
これは大変有利です。
ドット絵を描いていて手が止まる状況はよくありますが、技術不足だけが原因ではありません。
デザインやアニメーションの案が出ず、ドット絵を描き出せないケースもしばしば発生。
それらがすでに決まっている状態ならば、この問題のかなりの部分が解消されます。
動くドット絵に挑戦するなら、まずはすでに動いているもの(アニメ作品など)をドット絵化してみたり、既存のドット絵のパロディ(ちびキャラなど)を作るのがいいのではないかと思っています。
勉強にもなります。
パロディで軽減される4つの負荷
パロディを描くと、自分で考案しなければならない事柄が一気に減ります。
元ネタがあるのは二次創作全般にいえることですが、パロディでない二次創作ではキャラクターデザイン以外のプラス要素を自らひねり出さないといけません。
私は現在進行形で二次創作のドット絵を描いているのですが、パロディだと圧倒的に気が楽です。
デザイン
オリジナルを描く場合、キャラクターデザインでまず行き詰ります。
私はセンスがないのでここで困ることが多いですね。
パロディならば元ネタからデザインを流用できるのでかなり楽でした。
ジェネラルウィンドはジェネラルとゲニ子を足し合わせたデザインになっています。
ゲニ子の特徴である被り物はそのまま流用。
スカート部分もかわいくて好きなので採用。
他はジェネラルと同じに。
このように欲しい要素を組み合わせて外見を組み立てました。
モーション
モーションにはキャラクターの性格が表れているケースが多く、いざ「らしい動き」を考えるとネタが浮かばないもの。
パロディならパロディ元の動きをなぞるだけなので、モーションが思い浮かばないと悩む心配はありません。
ニュートラルポーズの構えはゲニ子のイメージと違いましたが、あくまでジェネラルの動きをトレースするというコンセプトに従って作業を進めました。
パロディの方針に沿って強行できるのもいいところです。
コマ割り
アニメーションのコマを何枚描くかも悩みの一つです。
動きのどの部分に枚数を割くかで印象が変わってきます。
格闘ゲームならば、性能に影響を及ぼす重大要素。
それでもパロディなら心配不要です。
本家と同じコマ割りにするだけ。
それで本家と(表示フレーム的な意味で)同性能がほぼ約束されます。
ジェネラルは凶悪性能だからか全体的に枚数が少なめでした。
格闘ゲームのキャラを描くなら枚数が少ないキャラを選択すれば完成までが近く、モチベーションを保ちやすいかもしれません。
作画方法
体をひねる、のけ反る、丸める……キャラクターに限っても難しいポーズがたくさんあります。
私のように人体やパースに詳しくない人だとなおさらです。
「ポーズや構図は決まったがどう描けばいいのか」と参考資料を探すうちに時間は過ぎていきます。
パロディなら問題ありません。
見たまま、同じように描くだけです。
これはジェネラルウィンドののけ反り画像。
本家ジェネラルを見て描きました。
性別による体形の違いはあるものの、顔や胴体がどのくらい見えているのか把握できるだけでもかなり助けになります。
パロディは元ネタが分かるように描く必要があるため、遠慮なく元ネタを真似ることができます。
よって
- ドット絵を描く作業だけに注力できる。
- 先人の成果物からデザイン・モーション・コマ割り・作画方法を学べる。
- 模写と違って作品として発表しやすい。
というメリットがあると言えるでしょう。
ドット絵も結局は表現方法の一つ。
描く時間のほか、何をどう描くか考えるのにもしっかり時間をとられます。
ドット絵を始めたてで「描く技術」をまず向上させたいなら、「描く作業」以外を省略できる題材を探してみるのはいかがでしょうか。
私は独学でドット絵を描いてきました。
初心者の頃を振り返ると見よう見まねで描くか、パロディを好んで選択していたように思います。
そのおかげでスキルに対して品質高めのドット絵を描けて、モチベーションを保てたのかもしれません。
最後に等倍のドット絵でお別れしましょう。
それではまた、次の記事で!